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海外に出てマイノリティの存在になることで、自分を追い込み成長しよう – 特定非営利活動法人ジャパンハート代表 吉岡秀人氏

Posted on 2015年04月28日
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ミャンマー、ラオス、カンボジアなど発展途上国での医療活動に20年以上携わり幼い子どもたちの命を救ってきた、特定非営利活動法人ジャパンハート 代表の医師・吉岡秀人氏。近年では小児がんと闘う子どもを応援する「すまいるプロジェクト」や日本国内でも僻地医療や震災支援などにも取り組んでいる。

英霊の声に耳を傾けて

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海外に出るのは多くの人にとって大きな決断かと思いますが、実際にどのようなメリットがあると思いますか?

これから世界ではどんどんアジアの存在感が増していき、特に紛争リスクの低い東南アジアの台頭は目覚ましいものとなるでしょう。私の予想では、その次にインドの時代が待っていると思います。日本は今後自らアジアに抱き込まれるように取り込まれていき、日本からアジアへ、アジアから日本へと国家間の人の流動性も加速するはずです。 このような時代に、日本国内のマーケットに固執することは、小さな池の中で要求度の高い戦いを強いられ続けるということです。ハイレベルの割には取り分が少ない。それが飛行機で数時間飛んだ先のアジアには、まだまだ十分に豊かになれる市場が広がっているのです。 日本人の英語のまずさは内外でよく揶揄されますが、私に言わせれば、これだけ真面目で勤勉な国民が英語を話せないということで助かっているのは、むしろ他国の方ですよ。日本人に英語を与えたら鬼に金棒。「本当に日本人に英語を与えてもいいんだな!?」とさえ思いますね。 若い人にはどんどん英語を身に磨いてもらいたい。日本人にとって英語は太い斧ですよ。これがあれば海外で活躍していける、その素質が日本人にはあるのですから。

海外に来たスタッフたちの教育も吉岡さんご自身が?

はい、若い人は特に習得が早いですね。日本では手術をなかなかさせてもらえない、下働きばかりで嫌だ、という不満を持ってやってくる若者も多いので、どんどん活躍の機会を与えるようにしています。 ただ与えるだけでなく、タイミングも私が注意深く見るようにしています。ギリギリまで我慢させて、今だというタイミングでゲートをポンと開けば、それこそ競走馬のように鼻息荒くものすごい勢いで成長していきますよ(笑)。 日本社会っていまだに「丁稚奉公」の風潮が強いでしょう。医学界でも、職人技を持つ医師が「ゴッドハンド」などと崇められる。これはナンセンスだと個人的には思っています。 西洋医学において重要なのは「再現性」ですから、私ができることは皆ができなくてはならない。西洋医学では医者は科学者です。そのために皆が同レベルの仕事をできるように医療機器を発明していくのが西洋人のやり方です。ゴッドハンドの医師はもはや芸術家の域に達していますよね。これでは名医は量産できません。

様々な国籍のスタッフを教育していて何かお気づきのことはありますか?

日本人とは別にミャンマー人やカンボジア人のスタッフもいて、彼らは非常に優秀です。日本人スタッフも目を見張っています。しかし、普通のカンボジア人・ミャンマー人みんなが驚異的に仕事ができるとは言えないのに、なぜこのようなことが起きるのか。自分なりに理由をつきとめたのですが、人はマイノリティになるとたちまち頑張るのではないかと。 組織内で少数派に属する限り、自分の存在価値を周囲に認めさせなくてはならない。だから必死で働き、仕事ができるようになっていく。日本人が海外に出ることは、この現象が起こるということです。異国の地でマイノリティとして自分を追い込み努力をすることで、能力を発揮していくことができるでしょう。

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吉岡さんは歴史についてもお詳しいですね。

歴史は好きですね。詳しくなったのはミャンマーにいることも関係していると思います。ミャンマーには、太平洋戦争時の日本兵20万の英霊たちが眠っています。彼らの慰霊碑には過去20年間、何度も足を運んできました。 無数に兵士たちの名前が刻まれた慰霊碑を目の前にして、今の自分よりも若くして命を散らした彼らに想いを馳せてみたことがあります。奥さんや子どもがいる人もいただろう。遠い異国でどんな想いで亡くなっていったのだろう……。個人の想いは私には知るべくもありませんが、皆に共通する想いを想像したときに、浮かんだ答えは「日本をよろしく」という一言でした。 祖国防衛という一途な想いが彼らを支えていたのではないだろうか。そのように想いを巡らせていると、私の立場で日本のために何ができるのだろうかと自問を20年間繰り返すことで、この活動に心底打ち込み、日本の多くの若者たちをいざない、成長させ、日本社会に有益な人材をつくり続けて、ゆくゆくは自分の死後、彼らに対して自分が生前してきたことを報告できるようにしたいという気持ちでいるのです。彼らは、今の自分から見たら息子のような年齢ですよ。若くして亡くなった彼らや今の若者たちに自分の背中を見せ、恥じない生き方をしなければと襟を正します。

日本の行く先についてどのように思われますか?

これから日本が世界で存在感を示すためには、メイド・イン・ジャパンをハイクオリティの証としていくべきだと思います。隆盛を誇ったモノづくり大国日本のイメージはそのままに、プロダクト(有形)からノンプロダクト(無形)にパラダイムシフトして、ジャパン・クオリティを世界に波及させていきたい。日本から医師団などの集団がやってきたら、「すごいプロフェッショナルがやってきた」と思ってもらえるような存在でありたいですね。 日本人が考えた仕組みや手術、教育、サービス、講義などの無形のものに対しても、日本の名が冠するだけで他国の人にとっての安心感や高級感の象徴として世界に発信していければ、と思います。

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