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異文化だからおもしろい〜ホーチミン市師範大学の日本語教師 井浦あすかさん

Posted on 2016年07月26日
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日本語教師として働く井浦あすかさんは、 新卒でベトナムの大学に飛び込まれました。そして、日本語だけではなく日本古来の武道である居合道もボランティアで教えています。


生徒から大人気で大忙しの日々をおくる井浦さんに、居合道への思いやベトナムでキャリアをスタートさせることとなったきっかけなどについてお話を伺いました。(インタビュー当時:2014年11月)


 


 

 

ベトナムで築く「居合道×日本語教師」のスタイル

 日本語教師をする舞台としてベトナムを選ばれたのはなぜですか?

 実はベトナムに行くことになったのは偶然で、本当はマレーシアの大学で日本語教師をする予定だったんです。

ところが、マレーシアの大学予算の関係で就職が取りやめになってしまって。

大学の先生に相談をしたところ、タイやシンガポールなどを候補として出して下さったのですが、その中で唯一大学で教鞭をとれるベトナムを選びました。

ベトナムには一度も行ったことがなくて、就職が決まってからガイドブックやベトナム語の本で文化や言葉を学び始める状況に。

でも、ベトナム人はみんな親切にしてくれて、ここに来られて良かったと思っています。

ベトナムで居合道クラブを設立されたきっかけを教えて下さい。

 2012年11月にベトナムに渡ってすぐの頃、大学内で開催された交流会で居合の演武を披露したことがきっかけです。

私は中学3年生の終わり頃から居合道を習い始め、日本で4段まで取得していたので、ベトナムでも居合道ができたらと考えていました。

すると、演武を見た学生から「自分も居合道を習いたい」という声があがったんです。ちょうど良い機会だと思い、翌年3月には大学構内のスペースを利用して居合道クラブを設立。

初めのうちは5名くらいだったのですが、だんだんと増えていき、今は20名ほどの学生が参加してくれています。

レベルの違いに対応するため、2クラス制で週1回、すべてボランティアで活動中です。

居合道は剣道と違い、実際に戦う相手がいません。その代わり、仮想の敵を意識した型の習得で得られるのは技術だけでなく“精神力を強める”こと。

最終目的を「人間形成」に置く居合道の面白さを、学生にも伝えていきたいですね。

 

「文化」への興味が、日本語教師への扉を開いた

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 なぜ日本語教師を目指すようになったのですか?

 高校生の頃から日本語教師になりたいと思っていたのですが、きっかけは2つあります。

まずひとつ目は、日本語が好きだから。特に、言葉と文化の繋がりに興味があったんです。

例えば、急速に日が暮れる秋を表した「秋の日はつるべ落とし」という言葉、この由来は面白いですよ。あっという間に過ぎる秋の夕暮れを“つるべ(=井戸にたらす桶)”に例えて、するすると井戸に落ちていく桶の様子に重ね合わせた表現なんです。

自然の風景を暮らしのあるものに例えてみたり、比喩にしてみたり、そんなところに興味を引かれますね。

また、中学校で古典を習い始めてからは、和歌の世界観にも夢中に。桜の散る儚さや、それを感じる日本人の心って素晴らしいなと感動していました。

 

ふたつ目は、異文化に興味があったから。「文化」そのものに対する関心が強いのかもしれません。

昔から異文化に触れることが好きだったので、将来は色々な人とコミュニケーションを取れる仕事に就きたいと思っていました。

そんな時に『13歳のハローワーク』(著者:村上龍)で日本語教師という職業を知り、私の好きなことがどれもできそうと思い、目指すようになりました。

実際に教師として働き、今は1年生の会話中心で8クラス受け持って教えているのですが、こんなに日本語が好きで日本語を勉強している人がたくさんいるんだと思うと、嬉しいですね。生徒たちもとても可愛くて毎日楽しいです。

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ベトナムをステップに、未来の働き方を考える

 井浦さんにとって、海外で働く魅力はなんでしょうか?

 海外には色々な文化があって、知らないこともたくさんある。自分が持っている常識との「違い」を体験できることが海外の醍醐味だと思います。

でも、こちらで暮らし始めたことで、文化は違えども人間はみんな「同じだ」ということに気づきました。

例えば、ベトナム語と日本語で比べてみると、中国由来の言葉ですごく似ているものがあったり、成り立ちの発想が似ていたり。

人間が文化を創っていく過程は同じなんだと思った時は、面白さを感じましたね。

 今後について教えてください。

大学に新しく日本語学習開発センターが設けられて私もそのスタッフになったので、仕事の幅が少し広がります。

留学生の対応や文化教育を担当したり、日本語学部のwebページを作って日本人がアプローチしやすくしたりと、やったことないことだらけですが楽しんでいきたいです。居合道クラブも、もちろん続けていきます。

 

それと同時に、自分のキャリアについても見つめ直す時期だと思っています。

今年はベトナムで働き始めてから3年目なので、次のステップを具体的に考えていくつもりです。

日本語教師としてキャリアを積むなら海外を舞台にしたいので、もっとスキルアップできるような道を探したいですね。

今いる場所での新しい挑戦を糧に、未来に繋げていこうと思います。

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プロフィール

井浦あすか/Asuka Iura

ホーチミン市師範大学 学習開発センター 日本語教師

 

1989年埼玉県さいたま市生まれ。日本文化が好きで15歳から居合道を始める。現在夢想神伝流居合四段。日本語教師を目指し、筑波大学日本語・日本文化学群に入学。マレーシア教育実習で「海外で日本語を教えよう」と決心し、大学卒業後、縁があり未知の国ベトナムへ。日本語と居合道を通して日本文化を伝えている。2014年7月、師範大学付属学習開発センターのメンバーに選抜。現在は日本に帰国し、日本文化インストラクターを目指して浅草で働いている。

 

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Ambassadorのプロフィール


濱田真里

海外で働く日本人に特化した取材・インタビューサイトの運営を2011年から続けている。その経験から、もっと若い人たちに海外に興味を持って一歩を踏み出してもらうためには、現地のワクワクする情報が必要だ!と感じて『ABROADERS』を立ち上げる。好きな国はマレーシアとカンボジア。

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