一人ひとりの思いを社会と繋げるために、必要なものとは〜NPO法人クロスフィールズ プロジェクトマネージャー田中 舞さん

2015.08.12

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新興国のNPOなどに日本企業から社員を派遣し、数ヶ月にわたって、本業で培ったスキルを活かして現地の人々とともに社会課題の解決に挑む「留職プログラム」。あらゆる枠を超えて挑戦する原体験を提供することで、明日の日本社会を切り拓いていく人材を育てています。この企画と運営を行うNPO法人クロスフィールズのプロジェクトマネージャーである田中舞さんに、どのような経緯を経てクロスフィールズで働くようになったのか伺ってきました。

無力感を感じたフィリピンでのワークキャンプ

国際協力に興味を持つようになったきっかけを教えて下さい。

大学2年になる直前の春休みに、初めてフィリピンに行ったことです。NGOのワークキャンプに参加したのですが、フィリピン人のおじいさんとおばあさんに戦時中のお話を聞いたり、農村で現地の青少年たちと一緒に活動したりしました。

そこで、戦時中の日本人に対して憎しみを感じる人々や、お金がなくて教育を受けられず「将来の夢」なんて持てないという貧困に直面する人々と出会い、今まで教科書でしか知らなかった世界をリアルに知ったのです。

強い衝撃を受けたのですが、自分にできることが全く思い浮かばなくて。私は偶然恵まれた環境に生まれたのだと実感したので、その中でできる限りのことを学び、還元しようと決意しました。

大学卒業後、なぜコンサルティング会社に入られたのでしょうか?

NGOなどにも興味があったのですが、ずっと興味を持ってきた業界にすぐに入るよりは、まずはあえて広く世界を知ろうと思ったからです。大学3年の夏に参加したインドでのボランティア活動でも、フィリピン同様に無力感を感じることばかりでした。

いくら思いがあっても、能動的に社会に働きかける力を身につけてからでないと、何も変えることができない。また、世の中を動かしている大きな力のひとつがビジネスだと考え、実践力を身につけたかったのです。

合計5年間勤めたのですが、特に最初の2年は非常に苦しくて。向いてないのではないかと悩みました。しかし、上司やチームメンバーのおかげもあり、少しずつお客様の役に立てている実感が持てるように。

大学時代から続いていた「自分には力がない」という思いが払拭された経験でした。そして3年目からはCSR推進室の立ち上げに関わることになったのです。

自分の思いと社会とのつながりを持つための種を蒔く

CSR推進室ではどのような取り組みをされていたのでしょうか?

日本のNGOやNPOの人たちに対し、プロボノとしてコンサルタントが中期計画の立案やファンドレイジング戦略策定を支援する取り組みをしていました。

この部門に入ったきっかけは、半年後輩の同期が一緒にやろうと誘ってくれたこと。彼女は入社当初から「この会社には、本当に優秀な人たちが集まっている。もし彼らがNGOや社会貢献活動に関われば、よりスピード感を持って社会が良い方向性に変わっていくし、彼らにとっても良い経験になるはず」と言っていたんです。

私は、コンサルティング会社はビジネスのためのもの、社内の人たちはビジネスにしか関心がないと思い込んでいたので、彼女の見方は非常に新鮮でした。

東日本大震災が起こる少し前から、彼女は社内でプロボノ活動を立ち上げようとしていたのですが、震災が起こったことで社内での機運が高まり、CSR推進室が設立され、プロボノ活動を開始。

この活動はユーザーからのニーズが高かったのですが、社内のメンバーにとっては新しい活動で、また無償で提供していたこともあり、人を集めることが難しくて。

また、個人的には、プロボノ活動に限らず、どんな仕事も「社会」とのつながりがあり、どんな小さな営みも世界を動かす一端であるはずだと考えているのですが、そういった意味で、如何にして会社の人達に「社会貢献活動」を自分事として捉えてもらうかが課題でしたね。最後の1年間はずっともやもやした思いを抱えながら活動をしていました。

そして、社会に関心を持ってもらうために必要なものを考え続けた結果、自分自身と社会を繋ぐ原体験が必要だという考えに至りました。そもそも、私がCSRに熱意を持って取り組んだのは学生時代のフィリピンでの体験があったから。

こういった原体験、自分の行動の一つひとつが社会とつながっているんだという感覚を持たない人に社会への関心をいくら訴えても、なかなか響きません。

会社内のCSR部門でできることもたくさんあったのですが、私は、一人ひとりがもっと自分自身の思いと社会とのつながりを持つような原体験を作るお手伝いがしたかった。だから、クロスフィールズで働くことを決意したのです。

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相手の立場に立って、寄り添うことで一緒に成長していきたい

留職を経験することで、他にどういった変化が留職者の方たちに起きますか?

留職経験を通じて「自分はこういう人間だ」という軸の部分がはっきりする方が多いです。

その部分がわかってくると、周りの環境や人に左右されなくなり、たとえ自分とは異なる生き方を見ても、「そういう生き方もあるよね」と相手に無理矢理自分の意見を押し付けることがなくなります。

つまり、他人に優しくなれると思うんです。留職者の方が大切にしたいと思う軸を見つけることで、留職者自身も周りの人も幸せに過ごして欲しいですね。

留職者と話をしていると、留職者に話しかけているようで、実は自分にもその問いが跳ね返ってきます。自分はどういう風に生きていきたいのか、ということを常に考えます。

私が彼らに対して何か答えを持っているわけではありません。彼らに等身大の姿で寄り添って、一緒に悩んだり考えたりする存在でありたいですね。

田中 舞さんのプロフィール

田中 舞(Mai Tanaka)

NPO法人クロスフィールズ プロジェクトマネージャー 

大学卒業後、約5年間コンサルティング会社に勤務。うち3年間、CSR推進担当として、自分自身もNGO/NPOへのコンサルティングに取り組む一方、社内にソーシャルマインドを持つ楽しさを伝えたいと、プロボノ活動の浸透に奮闘する。その後、2014年7月にクロスフィールズに参画。クロスフィールズが展開する「留職」プログラムのもと、アジアの新興国各国で活動する留職者の伴走者となり、国内外を駆け回っている。

取材・ライター

ABROADERS 代表

濱田 真里/Mari Hamada

海外で働く日本人に特化した取材・インタビューサイトの運営を4年間以上続けている。その経験から、もっと若い人たちに海外に興味を持って一歩を踏み出してもらうためには、現地のワクワクする情報が必要だ!と感じて『週刊アブローダーズ』を立ち上げる。好きな国はマレーシアとカンボジア。

 

 

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