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グラミン銀行で見たバングラデシュ貧困層の発展について

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こんにちは!杉山弥央(みお)です。バングラデシュの首都ダッカに住み始めてから早2ヶ月、暮らしにも大分慣れてきた反面、日本食が恋しくてしょうがない今日この頃です。


さて今回の記事では、私が今年1月中旬から3週間参加していたグラミン銀行のインターンシッププログラムの経験について綴ります。

 

バングラデシュの貧困を救う「グラミン銀行」

グラミン銀行。この名を聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。

マイクロファイナンスでバングラデシュの貧しい人々を多く貧困から救い出し、2006年には創設者Muhammad Yunus氏とともにノーベル平和賞を受賞した銀行です。

 

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注)ノーベル平和賞受賞時のYunus氏。

 

一般的に担保を持っていない貧困層に対し、無担保で10,000タカ(約15,000円)からの少額融資を行います。

融資は主に農村部の貧困層が対象となっており、債務者は週に1度村で開かれるセンターミーティングという会合で、グラミン銀行に対し利子も含め少しずつ返済していきます。

面白いところは「債務者の94%は女性」「融資を行うのは債務者が自分で起業することが大前提」という点。

 

古くからの家父長的な文化で、貧しい人々の中でも更に不利な立場にある女性。女性の生きる道は結婚であり、子供の頃から男性に依存するように教えられる文化が、特に農村部では色濃く根付いています。

そのような立場の女性に目を向け、自分で仕事を始めさせ、自立を通じて女性としての自信をつけさせる

私が実際に訪れた村では、融資を元手に農業や牧畜、縫製など何かしらのビジネスを立ち上げ、自分たちの生活を徐々に豊かにしている女性がたくさんいました。

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注)村のセンターミーティングにて。「グラミン銀行から融資を受けるようになって、
人生変わった人は?」の質問に、ほとんど全員笑顔で手を挙げていたのが印象に残りました。

 

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注)牧畜ビジネス。融資を元手にメスの子牛を購入し、通常は採れた牛乳を売り、
子供も産ませ、ある程度育ったら売却するとのこと。

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注)機織り機を使ってのビジネス。通常、製品は市場に出荷されますが、
この場で直接購入することも可能でした。

 

グラミン銀行の仕組みを支えるセーフティーネット

また驚くべきことに、融資の返済率は98.4%という高い数値を誇っています。この高い返済率を保つために、債務者が返済不能に陥らないようセーフティーネットが何重にも貼られているのです。

例えば、債務者達は信用がある人同士で5人グループを組まないといけないというルール。返済が滞ると最後、グループから排除されるという緊張感があります。

また、末端社員(各村の支店の方々)が債務者にかなり近い距離でマネジメントできる組織体系。どうしても返済が困難となった際、週あたりの返済額を一時的に減額するなどフレキシブルなプランまで用意されているのです。

 

何よりバングラデシュ式だと感じたのは、返済にあたり問題があれば支店長が債務者の家に何度も出向き、問題解決に向け親身にディスカッションするという点。

一見非効率に感じたのですが、この地道な活動が結果に結びついているそう。日本と比べ、会社単位だけでなく人単位での信用が、バングラデシュでビジネスをする上でかなり重要な鍵となってくるのだと感じました。

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注)村の人々と私。ある村の支店長さんは村の皆と1対1での
コミュニケーションを取っており、かなりの人望を集めているようでした。

 

多角的に貧しい人々の生活をサポート

そしてグラミン銀行は融資だけでなく、債務者の子供のための学資ローン、その他貯蓄や年金、保険などのプランも整えています。

更には銀行業務だけではなく、グラミンファミリーと呼ばれる企業集合体で多角的な経営を行っており、通信インフラ、ヘルスケア、電力、ガス、水、繊維など、金融以外でもあらゆるインフラ面で貧しい人々の安定な生活基盤を形成しています。

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注)Grameen Energy。家畜の糞を元に天然ガスを生成できる機械を
各家庭に設置しています。

 

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注)Grameen knitwearの工場にて。約2,400人もの従業員が、
24時間交代制フル稼働で働いています。ここでの商品は主にドイツに出荷されるそう。

 

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注)お馴染みユニクロとのジョイントベンチャー。ユニクロクオリティの
高品質な衣服販売につき、バングラデシュ国内で素材調達から生産、販売まで行っています。

 

グラミン銀行はあまりにも巨大で、想像以上にバングラデシュに欠かせない存在になっていることに驚きました。

 

逆にインターンシップ中に感じた今後の改善点としては、支店での記帳など全て手記入で、プロセスが凄まじくマニュアルで行われている点。

社員や債務者の方々のITリテラシーの問題もありますが、将来的なコスト削減や数値の正確性の確保、更にはビジネスインテリジェンスへの活用のため、IT化がより進んでいけば、成長速度も速まるのではないかと思いました。

(他の統括拠点等ではさすがにシステムが導入されているようでした。)

 

私の心を動かしたYunus氏の言葉

返済を行う力がないと見なされ、金融機関の融資対象から常に除外・無視され続けてきた貧困層に、真剣に目を向けたYunus氏。

彼の言葉で、ハッとさせられた言葉が2つあります。
「貧困に苦しむ人々自身には責任はありません。社会の体制や仕組みが貧困を作り上げているのです。」
「貧しい人々が信用に値しないのではなく、既存の銀行が人々に値しないのです。」

 

このように、既存の社会通念とは真逆の信念を掲げ、地道な活動を根気強く続け、現に貧困を減らす実績を作ってきたYunus氏。

彼が貧困層の人々の潜在的な力を信じている様は、2003年ロンドンでのスピーチ「Halving Poverty By 2015 - We can actually make it happen」からも良く伝わってきます。

長文ですが、是非読んでみてください。感動します。

 

この経験を通じて強く再認識したことは、貧困を救済するためには、当事者に単にモノカネを「与える」のではなく、当事者が「自立できるような仕組みを整える」ことが重要であること。

またどんな境遇に置かれた人たちでも、その人が持つ「潜在的な力」を信じることの大切さを感じました。

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注)インターンシップ中お世話になったアドバイザーのShamimさんと村の支店の前で。

インターンシップは1週間程度からでも参加可能なので、ソーシャルビジネスに興味のある方は是非チャレンジしてはいかがでしょうか?

 

ライター

杉山 弥央/Mio Sugiyama

1988年生まれ、北海道出身。異文化と触れ合い新しい世界をみることが好きで、アイスランドの留学や世界約35ヶ国への旅、また東京で国際交流を目的としたNPO「Japanize」を友人と運営した経験あり。東京、シンガポールでの勤務を経て、2016年1月にバングラデシュに移住。新しい環境で奮闘中。

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アーメッド弥央

1988年生まれ、北海道出身。異文化と触れ合い新しい世界をみることが好きで、アイスランドの留学や世界約35ヶ国への旅、また東京で国際交流を目的としたNPO「Japanize」を友人と運営した経験あり。東京、シンガポールでの勤務を経て、2016年1月にバングラデシュに移住。バングラデシュ人の夫が経営するスタートアップHishabにて、ボイスユーザインターフェースのERPを新興国マーケットに展開中。

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