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バングラデシュの子どもたちへ、映画を!~移動映画館編1~ গ্রামের স্কুলে চাকমা এবং বাংলা ভাষায় কার্টুন দেখানো হচ্ছে

Posted on 2018年11月16日
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「生まれ育った環境に関係なく子ども達が人生を切り拓ける世界をつくる」という理念のもと、途上国の子ども達に移動映画館で映画を届けるNPO「World Theater Project」。その活動に携わる私ですが、現地語版吹き替えアニメ『ハルのふえ』を、9月10日から一週間、バングラデシュの農村部で移動映画館を行ってきました。


 


前回はその映画準備のアフレコの様子をお伝えしました。


【前回記事リンク】バングラデシュの子どもたちへ、映画を!~現地の仲間とアフレコ編~


 


『ハルのふえ』吹き替え版制作期間中は、他の映画作品さえ観せに行く時間も取れなくて、移動映画館の開催は4ヶ月ぶりのことです。ワクワクを溜めて出発した久しぶりの活動で起きた素敵な出来事や失敗談等を、お伝えします!


 


 

1.おはよう、丘陵地帯の子どもたち

実は、準備の最終工程であるアニメ映画のデータ書き出しが完了したのは、夜行バスで現地に出発する3時間前のことでした。前日まで、編集やリテイクを幾度となく繰り返し、もう前夜の書き出し(時間がかかるので、いつもだいたい眠りながら待つ)で失敗したらおしまいだ……とギリギリの状態でしたが、なんとか終了し、予約していた夜行バスに乗り込みました。


荷造りも、翌日からの巡回予定もあやふやなまま、大事な映像データを含む「移動映画館道具一式(プロジェクター、PC、バッテリーやケーブル類、スクリーン、暗幕、等々)」と「入域許可書」だけは忘れずに、それらをしっかり握りしめ出発しました。


 


新作の上映初回は、やっぱり、私にとって特に思い入れのあるチッタゴン丘陵地帯から。毎度取得が面倒な外国人入域許可書も、今回はいつもより苦労せずに済みました。これは、プロジェクトに賛同してくれる現地の仲間が増えた証なのかもしれません。


8時間ほど夜行バスに揺られ、朝6時、第一目的地のランガマティへ着きました。おはよう、丘陵地帯!


バスでは眠れなかったので、まずは仲良しのチャクマ族のおばちゃんやお坊さんに会って、寄宿舎学校の休憩室で仮眠を取り、その日の午後から一校目の上映に動き出しました。


 


 

2.一校目はチャクマ語で

最初は、チャクマ族の子が9割、ベンガル人の子が1割という、首都ダッカとは正反対の生徒配分の学校で、チャクマ語の『ハルのふえ』の上映会です。


チャクマの子が多い学校でも、ふだんの授業は国語のベンガル語で行われます。家庭内やチャクマの人同士ならチャクマ語で話しますが、母語でアニメを観る、しかも学校で! 彼らにとってこんな体験はなかなかありません。そんな興奮が伝わるくらい、上映中の子どもたちは画面に釘付けでした。


教室に入った途端、私の声が消え入るほどに、移動映画館を歓迎する子どもたちのものすごい歓声! 


その中で「ディディ!」(お姉ちゃん!)と叫ぶ女の子たちがいました。4月にビジュ(お正月)で家々をまわっていた時に、偶然ある一軒で一緒にビジュを食べ、ジョゴラ(お酒。この時だけは子どもも呑むことを許される)を酌み交わした子たちだと気付き、思いがけない再会と一回目の上映成功にとても感動したのでした。


 

3.二校目はベンガル語で

一校目と同じ地域でも、こちらはベンガル人と少数民族の子の割合が半々の学校でした。なので、ここでは国語のベンガル語で上映を行いました。


 


吹き替え制作前から、願っていたことがあります。


まず、チャクマ語(少数民族語)版制作にあたって、たとえチャクマ族の人たちが少数民族であっても、チャクマ語の映像作品等が存在することで、マイノリティを蔑ろにせず、誇りをもち続けてほしい、単純に母語で映像を楽しんでもらいたい、との願いがあります。


そして、ベンガル語(国語)版制作は、もちろんバングラデシュの98%を占めるベンガル人の子どもたちのためですが、それともうひとつ……チャクマ族に限らず少数民族の子どもたちが国語を学ぶ抵抗感を少しでも減らせたら、という想いもあります。


少数民族の子どもたちが国語を学ぶことは、私たち日本人が英語を学ぶ苦労と同じです。いえ、私たちは英語が流暢に話せなくてもさほど困りませんが、彼らはペラペラにベンガル語を話せないと、生きるのに苦労するから尚更です。


例えばですが、小学校に入りたてのとある少数民族の子が、勉強に少しつまずいたり嫌になったりしていたとして、移動映画館でアニメを国語で見聞きすることで、少しでも「面白かった!また観たいな」と、立ち直るきっかけになれたらいいな、なんて考えながらこの活動に関わっているわけです。


 


この学校には5学年で800人の子どもたちがいて、上映を2度に分けて行いました。後方の子どもたちまで十分に鑑賞できたか心配ですが、笑う子、驚く子、立ち上がる子、肩と肩の隙き間からのぞく子、よそ見してる子、おしゃべりする子、みんなで共有しようと「ここからなら観えるよ!」と手招きし友だちを引き寄せる子……と色々な子どもたちがいました。


一人ひとり、受け取り方や印象もさまざまでしょう。今、私たちにできることは種まきだと思って、映画と出会った子のうち誰かの中で、いつか、そっと何かが咲くようにと願います。私も、映画から「現在」をもらったように。


 


 

4.クラス1~5(小学1~5年生)

バングラの学校は、クラス1~5(小学1~5年生相当)までがひとくくりで、中等教育が6~8と9・10 で分かれていることが多く、11・12年目がカレッジ(高校)となります。今のところ、たいていの移動映画館はクラス1~5の生徒たちに行っています。


その日移動映画館が来るということを先生から聞かされた子どもたちは、私たちの姿が見えただけで大興奮で、そんな子どもたちに圧倒されながら教室へ入り、ひと声「カートゥーン(アニメ)映画を観せに来たよ」と発すると、写真のようなに大喜びしてくれます。


この学校でも2回上映したのですが、ズルして2回とも観に来る子がいたりしたことに笑いました。


彼らにとっては、もしかしたら映画のストーリーよりも、映画館という特別なシチュエーションにワクワクしているのでは、とも活動を行っているうちに気づきました。そう気づくと同時に、まだ映画館と呼ぶには到底及ばない、ムードづくりの力不足を反省します。教室の中は蒸し風呂状態だし、映写機の光は弱くてスクリーンいっぱいにもできていません。今後絶対に改善して、素敵な映画館空間を作り上げていきたいです。


 


 

5.拍手喝采!

小学校の子どもたちが見せてくれるさまざまな反応の中で、『ハルのふえ』に関して、どの会場でも盛り上がるふたつのシーンがあります。


 


ひとつ目は、物語のはじめのほうで、赤ちゃんが大泣きするシーンです。


その赤ちゃんの声は、私が担当しました。さすがに吹き替えして聞かせられるほど現地語は流暢に話せませんが、赤ちゃん役は恥ずかしがる人が多くキャストも決まらず、私がやったのです。結果、子どもたちが決まって笑ってくれるシーンとなりました。やってよかった!


ふたつ目は、物語の終盤、笛の世界大会で、田舎出身の少年が、町で英才教育を受けて育った少年を打ち破り、見事優勝してしまうシーンです。その時、劇中のコンクール会場で、観客から徐々に拍手が沸き起こるのですが、それを観るか観ないかの段階で、映画を観ている子どもたちのほうから拍手が沸き起こるのです。


この様子はぜひ、動画(Youtube リンク・1)(Youtubeリンク・2)で見てもらえたら!


 


 

6.クラス6~8(中等教育)

11~13歳ぐらいにあたるのが、クラス6~8。曖昧な言い方をするのは、日本と違って落第や、遅れて学校に入学する子がこの国の事情としてよくあるためです。今までまわってきた小学校とはうって変わり、落ち着いた年長の子どもたちが私を照れ笑い気味に迎えてくれました。


大きな湖沿いに建つ3教室ばかりの中学校には、チャクマ、マルマとトンチョンギャの少数民族だけが通っています。後者の2コミュニティはチャクマ語も理解る(チャクマが多い地域に住んでいるから)ということで、チャクマ語で上映をしました。


 


荷物を降ろし、スクリーンを張り、パソコンとスピーカーの電源を入れ、プロジェクターとコードを繋いで、室内を暗くするために窓を閉めて暗幕を掛け、映像のピントを合わせて……。毎回そういった準備をするあいだ、子どもたちの視線を感じ、ただでさえ暑いのに、もっともっと汗をかきます。


 


自分が子どもの頃、ドラえもんやゴジラを、映画館で父と観た記憶がうっすらとあります。また、このクラス6~8の子たちと同じくらいの13歳の頃、友人と公会堂へ『タイタニック』を観に行きました。彼らもこんなふうに、今日の移動映画館を思い出してくれるといいな……。


中学生たちは、キャラクターたちのアクションよりもセリフをちゃんと聞いて、愉快な掛け合いや皮肉などに笑いが起きたりしていました。


 


 

7.大失敗…!

ここにきて、今記事トップ写真の話なのですが、これ実は、私が少女に慰められている様子です……。


ランガマティ県での最終日、1000人以上の少数民族の子どもたちが通う寄宿者学校の食堂で上映することに決まりました。ふだん350人ほどが一斉に集える広いスペースで、私の機材では光量も音量も力不足だと思い、学校にある会議用の物を借りることにしました。この日は祝日だったので、学校のホステルに寄宿している子たちに向けた上映会でした。


 


起きたのは、昔から私の頭を悩ませる、機械の互換性問題です。


映像のデータがある私のMacを、学校のプロジェクター(日本製)が認識せず映し出せないことから始まり、データをHDDに移し、学校のWindowsにコピーしようとしたけれど、書き出し完成してすぐに運んで来たアニメ映像は圧縮変換もしておらず……。加えて、HDDまでMac仕様でWindowsがまた認識してくれない。Mac、Windows、HDD、QuickTime、圧縮変換、MOV、mp4、GB、Bluetooth、HDMI、プロジェクター、DVD……呪いと感じるほど、どうしても苦手なのです。大学出たのに。


そうして私が半泣きになっていたところに、女の子がパソコンを覗き込んで、戸惑う私の様子さえ面白そうに見ていてくれて、それでありがとう、と感じているのがこの写真です。


男の子たちも、持参したギターで歌い始め、そんなこともあるよね~といった調子でいてくれました。結局、ここは次回出直す約束をしました。私のこの欠点を補うパートナー……募集しております(涙)。


 


 

8.どこでも映画館 ♪

色々あった移動映画館でしたが、今回の行程を終えた後、学校の先生がごはんと地酒をご馳走くださるとご招待してくれました。


お家の子と近所の子たちが集まってきたので、PCスクリーンで、クレイアニメ『フィルとムー』、そして『ハルのふえ』チャクマ語版をミニ上映会しましたとさ……めでたしめでたし。


 

経験した日: 2018年11月14日

Ambassadorのプロフィール


NatsumiA

1985年生まれ、青森県育ち。日本大学藝術学部映画学科在学時に、ドキュメンタリーの課題制作がきっかけでバングラデシュを訪れる。卒業後、映像制作会社の勤務を経て、2014年より単身でバングラデシュに暮らし始める。主な活動地は、チッタゴン丘陵地帯や国境沿いの地域で、少数民族と深く関わり、写真・映像制作を行っている(ドキュメンタリー作品『One Village Rangapani』【国際平和映像祭2015 地球の歩き方賞 および 青年海外協力隊50周年賞受賞】、写真集『A window of Jumma』【クラウドファンディング】など)。現在は、ロヒンギャ難民キャンプにも活動を広げ、ChotoBela works という現地ボランティア団体を立ち上げ、バングラデシュの子どもたちの "子ども時代 / チョトベラ" を豊かに彩ることを目標に、移動映画館(World Theater Project バングラデシュ支部代表)、アートクラス、カメラ教室、スポーツデイなどを開く。また、バンドルボン県で、クミ族とムロ族の子どもたちが寄宿するキニティウという学校をサポートしている。

NatsumiAさんが書いたノート


バングラデシュ に関するノート