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欧米ではなくアジアを目指す~まだ数少ない東南アジアの日本人弁護士のひとりとして – ラジャ・タン・タイランド法律事務所 丸山真司氏

Posted on 2015年03月31日
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日本の大手法律事務所に勤める弁護士・丸山氏は、ビジネスシーンや法務面でのアジアの存在感の高まりに応じてタイ・バンコクで経験を積むことを選択した。まだバンコクでは数少ない日本人弁護士のひとりとして、進出日系企業の法務サポートに尽力する。

まだまだ少ない、東南アジアの日本人弁護士

ラジャ・タン・タイランド法律事務所とはどのような事務所でしょうか?

本社をシンガポールに置き、50年ほどの歴史があります。フィリピンとブルネイを除く東南アジアすべての国にオフィスや提携先があり、東南アジアの法律事務所としては最大規模です。シンガポールの本社には日本企業を専門に扱うジャパンデスクがあり、日本人の弁護士が複数勤務しています。 所属する弁護士は約500名、東南アジア全域というカバー範囲の広さと、規模の大きさによる豊富なノウハウの蓄積を強みとしています。 私が働くバンコクオフィスは元々はローカルの法律事務所や外資系法律事務所、外資系企業の勤務経験のある弁護士が集まって設立されましたが、徐々に規模を拡大し、今では約50名の弁護士が所属しています。  私の主な業務は、タイに進出しようとする日本企業やタイですでに事業を行っている日系企業からの相談を受けるタイ人弁護士のサポートになります。 具体的には、会社の設立や各種申請のお手伝いに始まり、設立後も各種契約書のチェックやM&A、紛争時の交渉や訴訟のサポートなど多岐にわたります。タイは日系メーカーの工場も多い土地柄なので、労働問題などはよくある案件のひとつですね。

丸山さんはいつからどのような経緯でタイに?

タイでは2013年5月から働いています。 以前は東京の岩田合同法律事務所で働いていました。岩田合同法律事務所は創業113年を超える日本で最も歴史のある法律事務所の1つで、金融機関や電力会社、保険会社やメーカー等の案件を中心に、訴訟等の紛争解決を始め企業法務全般を扱っています。私は今も岩田合同法律事務所に籍は置いたままで、出向という形でラジャ・タン法律事務所に来ています。 日本にいた頃も私は企業法務全般を扱っていましたが、日系企業の海外進出、特にアジアにまつわる相談が増えてきている中で事務所としても今後より一層アジア法務に力を入れていこうという気運が高まっていました。ちょうどそのようなときに、商社に勤務する妻のタイ駐在が決まりました。 そこで私も、良い機会だと思って職場に相談し、タイへの出向を認めてもらって、タイでの勤務先を探すことになりました。 タイで働こうと思っても、最初は何から手をつけていいのか分かりませんでしたが、何か情報を持っていそうな弁護士向けの転職エージェントに話を聞いてみたり、知人のつてなどを頼ったりしていました。その頃、たまたま日本人弁護士の友人がラジャ・タン法律事務所のシンガポールオフィスで働いていたのですが、バンコクオフィスがちょうど日本人弁護士を探しているという話を聞いて、それをきっかけにコンタクトをとり、面接等を経て働き始めるに至ります。 日本の弁護士でも、特に企業法務を扱う事務所の弁護士には海外(特に英米)のロースクールに留学し、さらに1~2年ほど現地の法律事務所で研修を受け、その後帰国するという道を辿る人が結構いるのですが、私自身は留学経験があるわけではありません。 留学経験がないことが日本の弁護士として特にデメリットになるというわけでもありませんが、私も大学生の時に初めて海外に旅行に行って以来、自分の知らない世界をもっと自分の目で見てみたい、経験してみたいと思うようになり、機会があれば是非海外で生活し、働いてみたいと考えていました。 日本の弁護士は依然英米志向が強く、留学や研修先もアジアともなると一気にマイナーな存在になります。昨今ではアジアに向かうというケースも少しずつ増えてきているようですが、やはりまだまだ少数であり、このタイミングでアジアで経験を積むことができれば大きなアドバンテージになるという期待もありました。

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弁護士の方々にとってアジアはまだまだこれからという印象が強いのですね!バンコクに日本人弁護士はどのくらいいるのですか?

私が知る限りではバンコクに10人くらいでしょうか。タイに進出している日系企業 約1552社(2014年4月末時点・ジェトロ調べ)に比べると少ないといえるでしょう。 彼らとは、外国で勤務する日本の弁護士同士ということで自然と仲良くなりますね。 今までは私のように日本の事務所から出向で来ている弁護士が多かったのですが、最近ではタイの企業に直接採用される方もいらっしゃるようです。

仕事上のお客様はどのような企業でしょうか?

私がサポートするのは、基本的に日系企業の案件です。ただ私は日本の弁護士であって、タイの弁護士ではありませんし、タイの法律もこちらに来てから勉強はしていますが、オフィシャルな資格を有する専門家ではないので、クライアントに対して法的なアドバイスができる立場にはありません。そのため、お客様に対して法的なアドバイスを行い責任を負うのはタイ人の弁護士ということになりますが、日本人としての感覚や日本の法律との違いという視点を持って、現地の弁護士にはない目線からサポートできるので、この点はクライアントや事務所の現地の弁護士にも評価いただけているのではないかと思います。 またこれはタイに限らず東南アジアであればどこもそうなのかもしれませんが、タイでは法律と実際の運用面との間にズレがあることも少なくありません。 実際の運用面と法律の規定との間にズレがあるような場面では、日本の親会社の立場からすると、コンプライアンスの視点から許容しづらい事態が生じる可能性があります。他方でタイの子会社の立場からすると、タイの実務の慣行を全く無視してしまっては、うまくビジネスができないということもあり、難しいところですが、そのような場面で日本人の弁護士としての感覚が役立つこともあります。

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