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NPOで働くことに、特別な使命感なんていらない〜セブンスピリット理事長 田中宏明さん

Posted on 2016年06月21日
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9年間フリーランスのライターとして活動し、30歳でフィリピンに語学留学。その後、世界各地の子ども施設への訪問・視察を経て、2012年2月にNPO法人セブンスピリットを設立された田中宏明さんのインタビュー記事。

貧困から抜け出すためのライフスキル教育

ーー法人セブンスピリットの活動について教えてください。

スラムの子どもたちが音楽やスポーツを通して、社会の中での自分のあり方や他者を思いやる協調性を身につける「ライフスキル教育」に取り組んでいます。

また、2012年2月よりセブンスピリットの主催事業としてUUUオーケストラをスタートしました。日本の演奏家がフィリピンの子どもたちに楽器を教えたり、生のオーケストラに触れたことのない子どもたちの前で定期的に演奏会を開いています。

この事業は、音楽を純粋に楽しむ子どもたちと触れ合うことで、音楽をあきらめかけていた日本人の演奏家にとっても、次へ進むきっかけの場になっています。

ーー「音楽」と「スポーツ」のふたつを選ばれた理由は何だったのでしょうか?

今のフィリピンの学校教育には、音楽や保健体育といった人間の情操面を養う科目が、ほとんど機能していないからです。

路上で物乞いをしているスラムの子どもたちも、情熱を傾けられるものがあれば路上に出るのをやめ、目標に向かって努力をするようになります。

学力を上げて良い会社に入る方法もありますが、勉強だけでは仕事に必要なチームワークは身に付きません。僕自身、中学生の時にバスケットボールで教わった礼儀作法や道徳観が人生を変えました。

子どもたちにとってそういう存在になり得るのが、音楽とスポーツだと思ったんです。

だから、みんなが夢中になれる音楽とスポーツを通して、一人ひとりの人間性を育みたいと考えています。

一生お金に困らない生活を捨て、NPO設立へ

ーー田中さんがフィリピンに来られたきっかけを教えて下さい。

ドイツでのボランティアスタッフに応募するために英語が必要だったので、セブで語学留学をしたことがきっかけです。

私は29歳まで東京でパチスロライターをしていました。当時のこの業界はとても恵まれた環境で、仕事に困る状況ではなかったので、好きな時に寝て好きな時に起きるという、ある意味で堕落した生活を送りながら月の半分だけ仕事をしていれば、同世代の何倍もお金をもらうことができました。

たぶん、このまま一生食っていけるだろうなという感覚があったのですが、そんな時、旅で訪れた東南アジアで多くの貧困層の子どもたちと出会ったのです。

そこで、笑顔で物取りをする少年の姿を見て衝撃を受けました。もし犯罪の後ろめたさがあったら、こんなに無邪気な笑顔が出るはずがない、そもそも犯罪という意識がないのだろうと思ったんです。

「この笑顔がもっと良い方向に出せたらいいのに」と思ったことがきっかけで、30歳から別の人生を歩むことにしました。

ーーフィリピンに移住をされてから、どのような流れで今の団体を立ち上げるに至ったのでしょうか。

フィリピン移住後、毎週のように孤児院に通うようになったのですが、そこで孤児院で音楽を教える日本人の学生に出会いました。

彼は僕にベネズエラで40年以上前から続く「エル・システマ」という、児童犯罪防止に絶大な効果をあげているスラムの子どもたちへの音楽教育について教えてくれました。

目の前の子どもたちに体験してもらいたくて、早速ふたりでそれをフィリピンの子どもに合うようにアレンジしてやろうという話に。その流れで団体を立ち上げることになりました。

でも、僕は責任など背負うのが苦手なタイプ。本当は組織の代表なんて柄じゃないのですが、作った以上知らないふりはできません。

だから、自分の強い意志で立ち上げたとかではなく、流れに身を任せていたらたどり着いたというのが正直な気持ちですね。

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世界中の子どもたちを救おうとは思っていない

ーーNPOというと、社会を変えようという強い意志を持って活動しているイメージがあります。

僕は使命感に駆り立てられて活動しているわけではないんです。

みんなどこかで、何か特別な理由がある人しかNPOの道に進まないと思い込んでいる。たとえば、「なぜパチスロライターになったんですか?」と聞かれても、「パチスロが好きだったから」くらいの簡単な理由です。

それと同じで、単純にこの活動が楽しいからやっているだけで、必ずしも大それた理由がなくたっていいと思うんです。コンビニ就職するのも、NPO就職するのも大した違いはないと思っていますね。

僕みたいな存在がいることで、NPOで働くことのハードルを下げれたら嬉しいです。

ーー今後の活動について教えてください。

引き続きこの場所で、音楽とスポーツに限らず、子どもたちが主体的に何でも挑戦できる部活動のような環境を作っていきたいです。

そもそも僕は、世界中の子どもたちを救おうとは思っていません。結局は、目の前にいるセブンスピリットに来ている子しか救えません。

だからこそ、出来る限りたくさんの子どもたちが来られるように間口を広げようとしています。軽い気持ちで来てもらえる場なれば嬉しいです。

今、現地の大学とも連携しながら、セブンスピリットで学んだ子どもたちが奨学金を受けて大学に通えるような状況ができつつあります。

音楽やスポーツを通して子どもたちが自然に成長し、自分の人生を変えていける流れを作り出せたらいいですね。

ーースタジオで大声で日本の曲を歌う子どもたちを見ましたが、とても楽しそうでした。

僕が今やっていることは、きっと巡り巡って自分や日本に小さな影響を与えていると思っています。

子どもたちは日本人に対する親近感が強いので、将来日本人が旅行で来たら親切にしたり、彼らが海外で働くようになったら現地で日本人を助けてくれるかもしれません。そんな未来に繋がって欲しいですね。

 

田中宏明さんのプロフィール

田中宏明

NPO法人セブンスピリット理事長・全体統括

1981年1月13日 愛媛県生まれ。9年間フリーランスのライターとして活動し、30歳でフィリピンに語学留学。その後、世界各地の子ども施設への訪問・視察を経て、2012年2月にNPO法人セブンスピリットを設立。現在は理事長兼スポーツ担当として、子ども達とともに汗を流す毎日。

 

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濱田真里

海外で働く日本人に特化した取材・インタビューサイトの運営を2011年から続けている。その経験から、もっと若い人たちに海外に興味を持って一歩を踏み出してもらうためには、現地のワクワクする情報が必要だ!と感じて『ABROADERS』を立ち上げる。好きな国はマレーシアとカンボジア。

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