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繋がりづくりは“資源”を意識せよ〜台湾ワーホリから中国・深センでドローン事業を立ち上げた川ノ上和文さん〜

Posted on 2017年08月09日
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xyZing.innovation(翼彩創新科技(深圳)有限公司)CEOの川ノ上和文さんが、寿命100年時代のキャリアを高める戦略的ワーホリ論について語る連載の第4回。


20153月に台湾でのワーホリをスタートさせた彼が、生活拠点に選んだのは「ユースホステル」だったそう。友人・知人ナシの台湾生活で着実に現地ネットワークを広げていけたワケとは?

拠点をユースホステルに決めた2つの理由

−短期とはいえ1年間暮らす生活拠点に、ユースホステル(https://ja.homeyhostel.com/)を選んだのはなぜですか?


川ノ上:理由は大きく2つありました。一つは、コストを抑えたかったから。東京にいた頃もよく思っていたのですが、住居費って本当に高いですよね。


個人的に住居に求めるものは、眠るスペースがあってシャワーが使えること。それだけです。モノも極力持ちたくないので余剰スペースも必要ないですし、ワーホリでコストを抑えるなら住居費かなと思っていました。


それともう一つは、ユースホステルが海外と繋がりを持った人たちの集まる場所だから。当時私は台湾人の知り合いがまったく居なかったので、より多くの人と接点を持てる場所に行こうと思っていました。ユースホステルなら台湾人はもちろん、世界中の旅行者も集まってくる。ネットワークを広げるのに最適だと思いました。


それから私がいたユースホステルでは、業務と引き換えに宿泊場所を提供してくれる「エクスチェンジプログラム」をやっていたんです。


ワーキングホリデービザならOKというので、2015年1月、ワーホリ前に旅行で来た時にその場で「3月からエクスチェンジプログラムをやらせてほしい」と交渉しました。ニーズに合っていたうえ中国語スキルも活かせるので一石二鳥ですからね。 


−現地での1日のタイムスケジュールは?


川ノ上:まずホステルのフロント業務が1日4時間、3パターンのシフト制で入るのですが、私は午後〜夜にかけてのシフトでだいたい2〜6時くらいまで働いて、そのあとは自分の興味がある異業種交流会やセミナーに参加してみたり、友人と食事に行ったりしていました。


そのユースホステルでは週3回くらいのペースで交流イベントが開かれていて、台湾グルメや夜景ツアー、ビアナイト等、ユニークなものがたくさん開催されていたんです。


業務内容は、日本人宿泊者の対応のほか、ホームページにある中国語から日本語への翻訳、日本語でのFB投稿等、日本語にまつわる部分を全て担当していました。ある時は新たに導入するウォシュレットの取付や故障した読書灯の修理など、「なんでも屋」としてかなり貢献したと思います。


また、台北はユースホステルの競争が激しいので、どうやったら日本人客が増えるかをオーナーと一緒に考えました。日本の留学エージェントの台湾短期留学プランの宿泊先や、日本人アーティストのイベント場所としてロビー活用を提案したり……色んなことをさせてもらって、”イノベーティブ賞”までいただきました(笑)。


−賞までもらうなんて、すごい行動力ですね!


川ノ上:ただ、台湾のワーホリビザ条件として「1年間フルに就労することは原則許可されません。」とあるので、緩急をつけながら、スタッフとゲストを使い分けながら滞在していました(笑)。


特に切り詰めて生活をしていたわけではありませんが、1ヶ月間の出費は交通費と食費、交際費も含めて5万円くらい。物価が安いアジア圏だからこそできることですね。しかも台湾は食事が美味しい!


本当に家族のようなスタッフで、とても居心地のいいホステルでした。今でも台湾に行くとオーナーに挨拶に行き、近況報告し、共有スペースで昼寝させてもらったり、とっても良い関係です。今でもHPにも私のコメントが載っています。  

ランゲージエクスチェンジを通じて自分らしさの再確認

※大阪文化講座の様子


−当初は知り合いが1人もいなかったとのことですが、ユースホステルの繋がり以外にネットワークづくりのためしていたことは?


川ノ上:台湾人の方とのランゲージエクスチェンジです。日本語と他言語の言語交換パートナーが探せるウェブサイトがあるのですが、ワーホリに行く前からそのサイトを通じてランゲージエクスチェンジをしてくれるパートナーを探していましたし、滞在中も引き続きインターネットを通じてパートナー探しをしました。


私の場合、ワーホリ開始から2〜3ヶ月ごろまでは多い時に、1週間で4人のパートナーと会っていました。カフェに詳しい方、エンジニアの方、日系企業の記事翻訳をされている方、個人美容室を経営されている方など様々な台湾人と話すいい機会になりました。


そこから発展して仕事も紹介してもらい、台湾人医師で日本の医学試験の面接に臨む方の会話練習もしていました。私は体系的な日本語教育指導を学んだことがなく、入門-初級の文法指導では専門性が出せないためそのような依頼は断っていました。


しかし彼は中上級レベルで基本会話は問題なく、かつ学ぶ領域がピンポイントだったため、中国語スクール運営時、学習計画を作っていた過去の経験を生かして身体的な医療日本語や患者との会話シミュレーションに特化した内容を準備しました。


”キリキリ”や”ズキズキ”といった擬態語は文字で意味を理解するよりも、感覚的にこういった状態で使うというネイティブ感覚が重要なのです。これもまた良い経験となりました。


言語パートナー探しや様々な紹介を受ける場合、特にウェブサイトで探す時にはちょっとした「コツ」があるんです。


−パートナーを探す「コツ」ですか?


川ノ上:はい。サイトで自己紹介をする時に、単純に「日本人です、中国語の勉強をしています」と書くのではありきたりじゃないですか。もし私が言語交換のパートナーを選ぶ側だったらと考えてみても、そんなシンプルな自己紹介の人には申し込まないんじゃないかと思うんです。


たくさんの人の中から「この人面白いな」と思ってもらうこと、まずは会ってみたいなと思ってもらうことが大切です。そのためにも、自分自身が興味を持っているテーマやどんな話題に強いかを書いておくと良いですね。


オススメは、自分を客観的に見て“語れるテーマ”を箇条書きにしてみること。自分が関心あるテーマを明確にしておくことで、欲しい情報を見つける近道になるかもしれませんからね。興味領域を周りに伝えておくことで、誰かに自分を紹介してもらいやすくもなります。


ワーホリ中に私が推したのは「大阪出身」であること。大阪弁を教えられますなんて冗談も織り交ぜて書いたところ、大阪弁はじめ関西の文化に関心を持っている方から連絡をもらいました。


実は大阪が台湾人旅行客のリピーターが多いこと、本屋で大阪観光本や大阪文化に関する本が並んでいることもチェックしていたので、きっと大阪ファンが来てくれるだろうという読みがありました。


−大阪弁を学ぶ、とても楽しそうです!


川ノ上:旅行で大阪に行ったことがあるという方の他に、日本のバラエティ番組を見て大阪に関心を持った方もいましたね。実は台湾では字幕付きの日本のテレビ番組がたくさん放送されていて、中には日本番組専用チャンネルがあるほど。


その中で大阪のことを知ったり、漫才やお笑いに興味を持つ方は多いみたいです。関西って「人」が資源みたいなところがあるじゃないですか、ユニークなおばちゃんが特集されたりしますし(笑)。


そういう地域性をはじめとした文化や大阪弁を”面白いコンテンツ”と感じているという生の声も聞くことができ、大阪人としては非常に嬉しい思いでした。


最終的には台湾人向けの「大阪文化と大阪弁講座」の講師として中国語でセミナーをするところまでになりました。


昔から身についている母国語とも言える大阪弁をゼロから教える、しかも外国人を対象にという経験はもちろん初めてなので準備は意外と大変でした。そして、中国語で人前で話す度胸がついたのはこの時がきっかけだったかもしれません。


実はこの”大阪文化講座を台湾でやる”というのは渡航前にアクションプランの一つに入れていたので、目標を達成することができました。

繋がりづくり=“資源”の交換

※ホステル屋上でのBBQイベント


先ほどの「私がパートナーを選ぶ側だったら」という言葉がとても印象的でした。自分のためだけではなく、相手にも何か得てもらうことを意識されているんですね。


川ノ上:そうですね。人と人との繋がりは「資源の交換」によって生まれると考えています。先ほどのランゲージエクスチェンジの例で言えば、いくら言葉を流暢に話せても中身がなければ面白い会話は生まれない。


私が「大阪出身」という資源を持っているように、それぞれが持つ資源を交換し合うことでお互いに学びやメリットがありますし、その資源交換をきっかけにしてさらなる共通点や話題が見つかることもよくあります。自分の”資源の棚卸し”がとても大切です。


私がまず何かを知りたいと思った時には、単純に教えて欲しいというスタンスではなく、「相手がもらって嬉しいと感じる僕の資源は何だろう」と考える。お互いに交換しあってそれぞれが何かを得られる繋がり、その方が濃密な時間を過ごせますし、相手の記憶にも残って良いですよね。


BBT大学に入った2010年当時、自分の名刺を作っていたのですが、その時の自分を表すキーワード5個を名刺に記載し、話のネタにして、使い切ったらまたキーワードの見直しをする、というのをやってました。その経験が今に生きていると思います。


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次回は、現在にもつながるドローンとの出会いを生んだ、ワーホリ時代の情報収集方法に迫ります!


 


 


【プロフィール】


川ノ上 和文/Kazufumi Kawanoue


xyZing.innovation(翼彩創新科技(深圳)有限公司)CEO



大阪出身、中国・深セン在住。xyZing.innovation(エクサイジング イノベーション CEO/総経理。深センを軸としたアジアxMICEMeetings,Incentives, Conferences,Events)の事業開発をてがける。高校卒業後、東洋医学に関心を持ち北京留学。その後留学支援会社での講座企画、上海での日系整体院勤務、東京での中国語教育事業立上げ、台湾ワーキングホリデーを利用した市場調査業務に従事。新興国や途上国における都市成長やテクノロジーの社会浸透、人間の思考や創造力の開発に関心が高い。現在、ドローン活用の思考枠を拡げるための場として深センでアジアドローンフォーラムの開催準備中。

経験した日: 2017年08月09日

Ambassadorのプロフィール


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