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寄付は”自分のため”?寄付大国ミャンマーに根付く互助の精神

Posted on 2018年05月08日
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国民の9割が仏教を信仰する国、ミャンマー。
この国では、街のあちこちで寄付を募っている光景を日常的に目にする。

実際、世界寄付指数(1)において、ミャンマーは2014年から2017年まで4年連続で1位となっている。(ちなみに日本の順位は111)
特に金銭の寄付による貢献が大きく、2017年の集計では、「前月に金銭の寄付をしたか」という質問に対して9割の人が「寄付をした」と回答した。

ミャンマーの人々は、なぜそんなにも熱心に寄付をするのだろうか?
彼らの寄付行動の全貌、そしてその背景にある動機を探っていきたい。

街中で突撃インタビューを実施!

今回は、ミャンマー最大都市・ヤンゴンにあるテインジー市場の周辺で街頭取材を実施した。
この市場はヤンゴンにある市場の中でも規模が大きく、食材から衣類、家電に至るまで生活に必要なものが何でも手に入る
市場の周辺にも多くの商店が軒を連ねており、常に多くの人が行き交う場所だ。
そして、今回の取材では、ミャンマー人10人に対して5~10分程度の街頭インタビューを実施した。
年代は10代・20代・40代が各1名、30代が2名、50代が5名。全員が仏教徒だった。
男女比は女性が7名、男性が3名で、全員がテインジー市場周辺の商店、または露店で働いている。

ミャンマー人の寄付行動を解き明かす

前提として、インタビューのはじめに「日常的に寄付を行っていますか?」という質問をしたところ、10人全員が「はい」と回答した。

質問① いつ寄付をしていますか?

仏教の祭事や家族の出家など特別なイベントの時に加え、「毎日」「毎週」など定期的に寄付を行う人が10人中6人いた。 
寄付という行為が、いかに日常生活に浸透しているかが分かる。

日本人からすると意外なのは、3位にランクインした「自分の誕生日」かもしれない。
ミャンマーでは、誕生日の人が家族や友人にプレゼントを渡したり料理をご馳走したりして、日頃の感謝を表す。

今回取材した50代の男性は、誕生日には自宅に顔見知りの僧侶を招いてお菓子や飲み物を振る舞い、お経を唱えてもらうと回答した。

質問② どこに寄付をしていますか?

圧倒的に多いのは、僧侶や尼僧(にそう:女性の僧侶)に対するお布施である。
早朝に街を歩くと、僧侶や尼僧が列をなして街や市場の中を練り歩く托鉢を見ることができる。

毎朝決まった僧侶23人に500チャット(50)ほどを渡す人もいれば、50チャット(5)100人近くの僧侶に渡す人まで様々である。

ちなみに寄付先は、顔馴染みだから、出家した親戚・友人がいるから、など、人と人の繋がりが重要視されるミャンマーらしい理由で決められるようだ。

質問③ 何を寄付していますか?

圧倒的に多いのは金銭による寄付だ。一番手軽にできるためだろう。
詳しく聞いてみると、日頃は少額の寄付を行い、仏教の祭事など大きなイベントになると100,000チャット(10,000)以上の大きな額を寄付する人が多いようだ。
50代のある女性は、過去に100万チャット(10万円)もの額を一度に寄付したというから驚きである。

もちろん、寄付するのは現金だけではない。大手スーパーには、寄付用のお菓子や飲み物のセットが並べられている。
僧侶の身の回りの品を寄進する祭事のシーズンには、店内の人目に付きやすい場所にぎっしりと寄付用の僧衣が並べられていた。

また女性の中には、お手製の料理を寄付するという人もいる。
50代の女性は、4月のミャンマー正月に、瞑想センターに集まった数十人に手作りのミャンマーカレーを振る舞ったそうだ。

質問④ 1か月あたりの寄付金額はいくらですか?

今回取材した10人の平均額は、月におよそ28,000チャット(2,800)であった。
ただしこれは日常的な寄付にかける総額であるため、祭事の寄付を加えると、更に大きな額になる。
ちなみに、日本人の平均寄付額は1人あたり月500円ほど。ミャンマー人の収入が日本人の1/51/10であることを考えると、彼らの寄付金の大きさが分かる(2)

10代の学生の場合は月に6,000チャット(600)程度、仕事が安定しかつ子育てが一段落した40~50代の場合は月に50,000チャット(5,000)を使うなど、年齢や所得レベルによりバラつきがあった。
ただやみくもに寄付するのではなく、個人の状況に応じてそれぞれができる限りの寄付をしているようだ。

質問⑤ なぜ寄付をするのですか?

以上の結果から分かるのは、寄付という行為はミャンマー人の日常に深く根付いており、特別な行動では無いということ、そして個人がそれぞれの状況に応じて出来る範囲で行っているということだ。

とはいえ、日々の寄付や祭事の寄進などの総額は、決して安いとはいえない。
では、なぜ人々は熱心に寄付を行うのだろうか?何人かの答えを見てみよう。

道端で果物を売っていた50代の女性
「今うちは貧乏なの。夫がいないし、息子は身体に障害がある。原因は、前世できちんと寄付をしていなかったからだと思うのよ。だから、できる限り寄付をしていきたい。現世の今後のためにも、来世の為にもね。」

靴屋で働く10代の女子学生
「まだ学生でお金があまりないけど、出来る限り寄付したい。他の人のためにお金を使うのは良いことだと思うから。自分にも良いことが返ってくると信じているわ。」

警備員として働く50代の男性「人に尽くすことで、必ず自分にも良いことがあるはずだ。昔、近所の貧しい女性2人に、1か月間毎日ご飯を恵んでいたこともあるよ。来世に良い人生を生きるためにも、功徳(くどく)を積まなければ。」

以上のように、「現世/来世のため」「功徳を積むため」「自分に良いことが返ってくるから」を寄付の理由として答えた人は、回答者の8割にのぼった。
どうやら、彼らの行動の根源にあるのは、「人に対して尽くすことで功徳を積み、現世や来世でのリターンを期待する」という考えのようだ。

寄付を受ける側はお金や食べ物を得て、寄付をする側は功徳を積むチャンスを得る。
ただ一方的に施しを行うのではな、このようなウィンウィンの関係が成立しているからこそ、生活の中に寄付という行いが深く根付いているのかもしれない。

まとめ

日々熱心に寄付を行い、人の世話を焼きたがるミャンマーの人々。
功徳を積みたいという想いがあるせいか、人のためになると思うことは少々強引にでも実行する。

その優しさを「相手の都合を考えないお節介だ」と感じる人もいるのかもしれない。実際に、ミャンマー在住の外国人からそのような発言を耳にしたこともある。

しかし、他人の視線に臆することなく、「人のためになる」と自分が信じることを堂々と行う姿勢を、悪いと言い切ることは出来ない。

確かに日本では、さりげない気遣いが美徳とされる風潮がある。
この奥ゆかしさを大切にする姿勢が日本の文化ならば、堂々と互いに尽くし合うミャンマー人の姿勢もまた、ひとつの文化なのだろう。

顔を合わせれば、
「ごはん食べたの?」
「何か困ったら、すぐ言いなさい!」
と言われる時に覚える、気恥ずかしいような、申し訳ないような、それでいてちょっと心地良いような、くすぐったい感覚。

こんな不思議な感覚を覚えつつも、何だかんだで人の温かさにほっとする、これこそがミャンマーという国の最大の魅力なのかもしれない。


(1)世界寄付指数:イギリスの財団Charities Aid Foundationが毎年発表している指標で、世界139か国(世界人口の95)でデータを収集している。この指数は、見知らぬ人を助けること、金銭による寄付、ボランティアに費やした時間という3つの指標から算出される。
2017
年のトップ5は上から順に、ミャンマー・インドネシア・ケニア・ニュージーランド・アメリカ。日本は111位だった。
[
参考] “
CAF WORLD GIVING INDEX” Charities Aid Foundation
(2)寄付白書2017の調査では日本の年間個人寄付総額は7,800億円。日本の人口1.27億人で割り月平均を算出した。

経験した日: 2018年05月08日

Ambassadorのプロフィール


リンクルージョン

私たちはミャンマーでマイクロファイナンスによる貧困削減をITで支援しています。農村やスラムに暮らす人々が、どのような生活をおくり、何を感じているのか。どのようなビジネスをしているのか。ニュースや統計データからは感じることができない、ミャンマーに生きる人々のリアルな姿をお届けします。

リンクルージョンさんが書いたノート


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