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ミャンマーで代々続くバゴーの鍛冶屋~遠方の客にも愛され続けるヒミツ

Posted on 2018年12月25日
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親子の連係プレーは見る者を虜にする


ミャンマーの最大都市ヤンゴンからバスで揺られること2時間。東部の中心都市バゴーの中心部に、何世代も続く鍛冶屋があります。


聞くところによればこの鍛冶屋、遠くの街からも商品を求める客が訪れるほど評判なのだとか。


かつて、日本でも町や村にひとつはあったという鍛冶屋。ミャンマーではどのように息づいているかこの目で見る為、鉄を打つ音が小気味良く響く工場を訪ねました。


 


 

ミャンマーの鍛冶屋は何をしているの?

鍛冶炉の前で笑うミエイさん(左端)とその家族。息子ふたりは18歳と16歳


鍛冶屋「ウ・ミエイと息子たち」を営むのは、親方のミエイさん(52)と、ふたりの若い息子たちです。ほかにも2名従業員を雇い、2台の鍛冶炉を動かしています。 


製品の材料は、廃棄された自動車から出る鉄のくずです。買いとったくず鉄を、牛に引かせる耕運機のブレード、ナイフ、斧、さらには住宅の門などに加工し上げて、農民や卸売業者に売っています。


 


息子さんがすすで黒ずんだレンガの鍛冶炉に、手動のふいごで風を送り込む作業をしていました。積み上げた木炭からは赤い火を噴き上げ、その高温の炎で焼かれた鉄板がオレンジ色に変わっていきました。


ミエイさんがそれを巨大な金属のはさみでつかんで台に置き、ミエイさんと息子さんの阿吽の呼吸でハンマーを打ち下ろすと、鉄は立派な刃に生まれ変わっていきました。


日本にもかつて農具や包丁などを作る野鍛冶、農鍛冶と呼ばれる鍛冶屋がよくいたそうですが、ここミャンマーでは、まだまだ現役のようです。


 


彼らへの注文の大部分を占めるのが、牛に引かせて使う伝統的な耕運機。


ふだんは鉄のブレード部分だけを作り業者に卸しているそうですが、農業が準備段階に入る4~8月頃は農家からの直接特注を受けて、耕運機をまるごと作ってしまうのだそう!


ミエイさんの作る耕運機には根強い人気があり、地元の農民はほとんどミエイさんの製品を使っているそうです。


 


 

お得意さんは離さない

ミエイさん


ミエイさんの人気は、地元バゴーにとどまりません。バゴーを離れてしまったお得意さんも、ヤンゴンなどさまざまな土地から遠路はるばる訪れ、ミエイさんの鉄製品をまとめ買いして行きます。ヤンゴン、タウングーから車で2時間強、エーヤワディーは5時間弱、ピーという街からは車でなんと6時間以上もかかるのに、です。


ミエイさんの製品はなぜこれほど顧客の心をとらえるのでしょうか?


 


 

人気の秘密は?

ミエイさんの名が彫られた耕運機のブレード(赤丸で囲った部分)


人気の理由としてまず挙げられるのは、ミエイさんと顧客の信頼関係です。


耕運機のブレード一枚一枚にミエイさんの名前が刻まれ、製品の質を保障しています。ミエイ・ブランドはアフターサービスも充実していて、壊れたり切れ味が悪くなった農具も、工場に再びもち込めば蘇ります。


もちろん、鉄加工の実力にも定評があります。ミエイさんは14歳から父の手伝いを始め、跡を継いで24年。「稼げているのは、長年培った俺の腕があるからだ」と、自信に満ちた姿がありました。


 


 

輸入品にも負けない鍛冶屋さん

耕運機。4~8月で20~30本ほど仕上げる。販売価格は220,000チャット(約18,000円)


そこで気になるのが、最近中国や日本から流入する農業機械です。実際、ミャンマー商務省は2017年11月、農業機械などの輸入販売を一部自由化すると発表するなど、市場環境は変わりつつあります(※ページ下)。ミエイさんの仕事に影響はないのでしょうか?


「特に問題はないね」と断言するミエイさん。2年ほど前から外国製品が商売敵になってきたものの、「エンジンで動く外国の耕運機は土をダメにするから人気がないんだ。それに、若い芽まで刈り取ってしまうんだ」と言います。


真偽のほどは不明ですが、牛と一緒に耕運機を使う伝統的な農家はミャンマーでは健在で、「なじみの客が買ってくれるから」とミエイさんは余裕の表情を浮かべていました。


 


 

販路の拡大も忘れない

三輪バイクの荷台を溶接するミエイさんの息子


そうは言いながら、昔ながらの手法のみに固執しているわけではないのが、ミエイさんたちのすごいところです。


ドリルを購入して斧の加工を効率化したり、溶接機も2台仕入れて、火花を散らしながら三輪バイクの荷台を組み立てていたりします。資金も、毎年数万円をマイクロファイナンスで借りて調達しています。新しい技術にも臆せず投資した結果、多様な商品を販売できるようになったので、返済も順調にいっています。


 


 

豊かになっても職人魂は失わない

工場の2階が居住空間。屋根がトタンなので、室内に熱がこもりやすい


最後に、居住空間を見せてもらいました。


月収は、ミャンマーでは裕福なほうの1,000,000チャット(約82,000円)というから立派な内装を予想していましたが、壁と床は木の板を並べただけで、天井はトタンで覆われた質素なつくりでした。室内にはエアコンも扇風機もなく、奥さんも「コンクリートの家が欲しいわ。夜は暑くて眠れないのよ」と苦笑していました。


収入のうち相当な部分を仕事につぎ込んでいる、とミエイさん。代々鉄を打ち続けてきた昔ながらの鍛冶屋が、時代が変わっても顧客に愛され続ける秘密は、その職人気質にあるように感じました。


 


【参考】


※「Ministry relaxes import rules for over 250 items」ミャンマータイムズ


取材協力:MJI Enterprise


 

経験した日: 2018年12月18日

Ambassadorのプロフィール


リンクルージョン

私たちはミャンマーでマイクロファイナンスによる貧困削減をITで支援しています。農村やスラムに暮らす人々が、どのような生活をおくり、何を感じているのか。どのようなビジネスをしているのか。ニュースや統計データからは感じることができない、ミャンマーに生きる人々のリアルな姿をお届けします。

リンクルージョンさんが書いたノート


ミャンマー に関するノート