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それは庭先の自生ハーブから始まった カンボジアで見つけたソーシャルビジネスの種
はじめまして。カンボジア産のハーブ製品の製造販売しております西口三千恵です。2008年に初めてカンボジアへ来てから今年で、在住9年目に入りました。今回は第一回ということで、カンボジアに来て現在の事業を始めた経緯を書かせていただきます。
カンボジアのハーブをお茶にしています(All photos by Hiro)
診療所のハーブを製品化
私は、イギリスの大学で国際開発マネージメントを学んだ後、医療関係のNGOの職員として、アフリカ南部に位置するザンビア、マラウィで約2年間勤務しました。
その後、2008年に同じNGOの派遣でカンボジアに来ました。ここでは2010年ごろから、シアヌークビル州に建設された診療所の運営支援が主な活動となったのですが、この診療所が慢性的な運営資金不足に陥っていました。
私の役割は、国外から支援を引っ張ってくること。国際ロータリー財団などからかなりの援助が集まり、診療所の設備環境は大きく向上し、運営状況もかなり改善されました。
しかし診療所の評判が上がれば上がるほど、助けを求めてくる患者も増えました。診療費を払えない患者も多く、なかなか黒字に転換することができませんでした。
筆者とともに事業に取り組むSilangさん、Layさん、谷許絵里さん(左から)
そのような時、診療所の周囲に生えているハーブに目が留まりました。
「医療報酬が上がらないなら、このハーブを何らかの形で売ることで、別の収入源を作れないかな」
ふと友人に漏らしたとき、「やろうよ」との答えが彼女から返ってきました。プノンペンでデザイン関係の仕事をするその友人は、日本でハーブを学び、ブレンドもできるというのです。
こうして、カンボジア産のハーブ製品を作るという試みが始まりました。
「ワイルドクラフト」という付加価値
診療所の周りに生えていたハーブは、何も世話をしていないのに、勝手に育ちます。
例えばレモングラス。乾季にはからからに乾燥し、枯れたように見えるのですが、雨季に入るとあっというまに新しい葉を伸ばし、青々と茂ります。ハイビスカスは、去年のこぼれ種が次の年の雨季になると芽吹き、雨季の終わりになると自然につぼみが付き、花が咲きます。
自然の力で育つカンボジアの植物
「オーガニックですか」という質問をよく受けますが、これはなんと表現するのでしょう。
オーガニック栽培は、ある程度コントロールし、管理したなかで育てられるものです。
自然栽培? 栽培していると言えるのかどうかも、怪しいです。野生?
いろいろ考えた結果、私たちは「ワイルドクラフト」という表現が一番妥当だと判断しました。
力と知識、人脈を結集
次の問題は、この力強いハーブをどうやって美しく、衛生的に乾燥させるかでした。
カンボジアの市場に行くと、ハーブティーが多種売っています。でも、変色していたり、中に髪の毛が一緒に入っていたりと、とても飲んでみたいと思えるものではないことがほとんどです。
診療所のスタッフに、「衛生的な収穫と乾燥」を覚えてもらうことが大変重要でした。
製品化するまでにはさまざまな困難も
幸いなことに、診療所の所長はかなり衛生管理に厳しく、これまでにもその点については十分すぎるほど訓練されてきたスタッフでした。さらには、研究熱心な所長自ら、太陽の熱と風を有効に利用して電力を使わない「ソーラードライヤー」まで作ってくれました。
知識、原料、技術、やる気と、すべてがうまくめぐり合った瞬間でした。
診療所で栽培できるものだけでは品種も限られるため、保健省のカンボジア伝統医療局でアドバイザーをしている高田忠典さんに問い合わせ、ハーブに関心の高いカンポットにある小学校を紹介してもらい、栽培の協力を得たことも、かなり強力なサポートとなりました。
身体と自然にやさしいものを
医療支援NGO職員からハーブ製造販売へ、あまりにも異なる世界への挑戦で、不安もありましたが、これまでカンボジアで出会った人々とのネットワークで、驚くほどすべての算段がつきました。
トライアルで製造をしてみた結果、うまくまわせると考え、2015年の夏、ハーブ製造販売を事業とする会社を設立することになり、それを機会にNGOは退職をしました。
この国に根付いて生活してきたことが活かされたのだ、と強く感じました。
これから、このカンボジアでの生活や仕事についてお話していきたいと思います。よろしくお願いいたします。
by Nnn