ABROADERS

  • HOME
  • バングラデシュの貧困の現状【ストリートチルドレン問題と救済活動】

バングラデシュの貧困の現状【ストリートチルドレン問題と救済活動】

0
12942

 


こんにちは、アーメッド弥央です。


早速ですが、皆さんはストリートチルドレンに会ったことはありますか? 日本に住んでいると出会うことはほぼありませんが、ここバングラデシュでは至る所で彼らを見かけます。一説によれば、バングラデシュ全体で100万人ほどのストリートチルドレンが存在するとのこと。どうしてストリートチルドレンになってしまうのか、彼らはどのような生活をしていてどのような危険にさらされているのか。バングラデシュでは彼らのためにどのような救済活動があるのか、そして私自身は彼らに対してどう感じているのか......。今回はバングラデシュのストリートチルドレンについてお伝えします。


 


 

ストリートチルドレンはどこから来て、何をしているの?

ストリートチルドレンが生まれる背景はいくつかあります。災害や病気などで親を亡くしたケース、親は生きていても虐待を受けたり親の再婚などをきっかけに捨てられてしまったケース、もしくは家族と共に住んでいるけれども、貧困のために路上に住み働かざるを得ないケースなどがあります。


 


彼らは物乞い、売春、ゴミ拾い、物売り、工事現場での重労働、麻薬の売買の仕事などをして、毎日食いつないでいます。彼らの仕事の中で特に危険と言われているのが、売春と麻薬の売買です。どちらも言わずもがなですが、売春は幼い子どもの体だけでなく心にまで傷を負わせ、性感染症を患ったり、望まない妊娠をするリスクを伴います。妊娠しても中絶手術のお金もないため産まざるを得ず、貧困の中更に生活が困窮する事態に陥ったり、新たなストリートチルドレンを生み出すことに繋がります。麻薬の売買は、自分自身も麻薬を乱用することも多く、人格を崩壊させその後の人生を台無しにしてしまいます。


 


また、仕事ではなく、路上に住んでいるだけでも常に危険は伴います。不衛生な環境で生活をしていることで病気を患い、医療も行き届かないのでそのまま命を落とすこともあるそうです。女の子のストリートチルドレンであれば、レイプなど性被害にあう危険もあるので、髪を短く切ったりり、男の子の服装をして、女の子であることを隠して生活する子ども達も多いそうです。


 


 

日本のNGOによる救済活動

エクマットラチルドレンホームの中学生くらいの女の子たち


 


 


昔から根強く残るバングラデシュのストリートチルドレン問題。この問題解決のために、どんな活動が行われているのでしょうか?


 


バングラデシュ政府は、ドロッピングセンターと呼ばれる施設を運営し、ストリートチルドレン向けに食事や寝所を提供しているそうです。しかしながら、一時的な食事や寝所を与えられただけではこの問題の根本的な解決になりません。


 


政府以外では、NGOなど多くの団体がストリートチルドレン救済のために活動しています。その中でも、今回は日本人が代表を務めていらっしゃる団体「エクマットラ」についてご紹介します。


 


エクマットラは代表の渡辺さんがバングラデシュ人の仲間と2003年に立ち上げた、ストリートチルドレンに健やかな成長を促し、次世代を担うリーダーになる人材も輩出できるような基盤を提供するNGOです。エクマットラの活動は1. 青空教室でストリートチルドレンに勉強やレクリエーションの機会を提供する 2. チルドレンホームの集団生活の中で彼らの社会性を育む 3. アカデミー( もうすぐ開校予定!) で高等教育や技術訓練を行い、次世代のリーダーも輩出できるようなプラットフォームを創生する の3段階でストリートチルドレンから社会で活躍できる立派な人材へ育てるような仕組みになっています。


 


また驚くべきことに、活動資金は寄付ばかりに頼らず、映像作成やハンディクラフト事業など自分たちで事業を行い、活動資金を生み出しているそうです。この活動は、「外部からボランティアなどで貢献活動を行ってもそれはあくまで一時的な解決方法にしかならず、問題の根本的解決のためには現地で自動的に回る持続可能な仕組みを作らなければならない」ということをまさに体現されていると思います。そして、それは私がバングラデシュに移住することを決めたきっかけのひとつにもなった、ボランティア活動で肌で感じたことでした。


 


「ただ道から連れてきただけではダメ。彼らには路上で働き自立してきたという自負があるから。彼らをどのように更生させるのか。教育の重要性を理解させ、安全な住居を提供し、将来の夢に向かって正しい道を歩かせる。」 表面的なことだけでなく、本質的な解決につながることを実行するプロセスの中には、ストリートチルドレンだけでなく、親たちとも心底向き合って話し合いを続けたり、子どもたちの共同生活の中で起こる大小様々なトラブルを日々解決したり......。ふつうに暮らしているだけでも思い通りにならないことばかり起こる国で、それを遥かに上回る根気強さが必要とされることが容易に想像できます。エクマットラの皆さんには尊敬の一言です!


 


私も何度かエクマットラのチルドレンホームを訪問させていただきましたが、そこにいる子どもたちはみんな素直で人懐っこく笑顔あふれる子ばかりで、かつて路上に住んでいたとは思えませんでした。子どもは大人や周りの環境次第で如何様にも変わっていくのだということを痛感しました。


 


 

根強いストリートチルドレン問題。私ができることって?

最近のエクマットラチルドレンホーム訪問。息子もとても可愛がってもらいました!


 


2015年10月、私が初めてバングラデシュのダッカ・シャージャラル空港に降り立った時、空港を出てすぐ目にしたのは、渋滞する車の窓をひとつずつ叩いて物乞いをする老人や小さな赤ちゃんを抱くお母さんたちでした。繁華街を歩けば、裸足でシールを売っている子どもにずっと後をついてこられたりもしました。


 


日本をはじめ豊かな先進国から来た人は少なからず衝撃を受けるであろうこの光景。私もバングラデシュに来たばかりの頃は、このような光景を目にする度に心が痛み、「この現状を変えられることにつながる行動をしたい」と思ったものでした。しかしながら、毎日のように目にしていると、その光景にいつの間にか慣れ、物乞いや路上で生活する人たちを見ても、今は当たり前の風景の一部として捉え、正直前ほど気にしなくなっている自分がいます。


 


バングラデシュに訪れた人の中には、たまに「路上にいる物乞いの人たちに、現地の人があまりにも無関心で違和感を感じた」と言う人がいます。それは当然の感情だと思いますが、現地に住んでいる私には、現地の人がなぜこの衝撃的な光景に無関心でいられるのかなんとなくわかります。それは、どんな問題も、それが日常的に起こっている環境で生活をしていたら、それ自体が日常になり、多くの人がその問題を特別に意識しなくなるからです。


 


加えて、自分の家族や仕事を第一に生活を送っている私にとっては、このような社会課題の解決に注力することは、時間的にも体力的にも厳しいと思っています。そうは言っても、みんなが無関心では、いつまで経っても状況は1ミリも好転しないことも事実です。そんな「何かしたいけれど具体的な行動を起こせていない」私は、自分ができる小さなことから始めています。


 


具体的には、


・自分が賛同できる活動には、少額ではありますが、寄付で支援する


・路上で物乞いする子どもには、手持ちのお菓子をあげる。お金じゃないの? と思われるかもしれませんが、路上で物乞いする子どもの後ろには大抵それをコントロールする大人がいて、たとえお金をあげても最終的にはその大人に巻き上げられてしまう、と聞いたことがあります。それでも、路上の子どもを見ると、お腹が減っているように見えるので、食べ物をあげるようになりました


・自分が今従事している仕事を頑張る! 私が今力を注いでいるビジネスは、貧困層の人々の生活の向上につながる活動であることに加え、最終的にはバングラデシュの経済の底上げの一助となることを目標にしています。それが将来的にはストリートチルドレンを減らすことにつながると考えています


 


私と同じように、「何かしたいけれど何をしたらのか分からない」 という人は、まずは「知る」 ことから始めてみてはいかがでしょうか?


 


 

経験した日: 2018年03月01日

Ambassadorのプロフィール


アーメッド弥央

1988年生まれ、北海道出身。異文化と触れ合い新しい世界をみることが好きで、アイスランドの留学や世界約35ヶ国への旅、また東京で国際交流を目的としたNPO「Japanize」を友人と運営した経験あり。東京、シンガポールでの勤務を経て、2016年1月にバングラデシュに移住。バングラデシュ人の夫が経営するスタートアップHishabにて、ボイスユーザインターフェースのERPを新興国マーケットに展開中。

アーメッド弥央さんが書いたノート


バングラデシュ に関するノート