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【バングラデシュ】チッタゴン丘陵地帯の子どもたちにたくさんの「はじめて」を届ける。海と出会うスタディツアーへ

Posted on 2020年02月17日
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こんにちは、バングラデシュで活動するNatsumiです。


■著者・過去記事一覧
https://www.abroaders.jp/ambassador/detail/2631


2019年12月、私たちの活動団体「ChotoBela works(チョトベラ ワークス)」 が運営サポートする学校、キニティウの子どもたちと、年2度目の課外活動(スタディツアー)へ出かけました。


行き先は、お隣の県コックスバザール。世界一長いロングビーチと、今日はロヒンギャ難民キャンプがある地域として有名です。今回はそこでの思い出と、この課外活動に私がほんのり込めた想いについてお届けします。


 


 

1.バスで5時間、チッタゴン丘陵地帯を下りてコックスバザールへ

朝7時、一台の貸し切りバスが、キニティウのあるロントン村から約50人を乗せて出発しました。子どもたちの数は2~5年生の35人。アレ、残りの15人は誰? キニティウの先生と私たちChotoBelaのスタッフ数人と……ナント村人たち!(笑)


保護者として付き添いは数人お願いしていましたが、なんだかんだ行きたい人が増える増える!  しかもあるおばあちゃんは「私はもうすぐ死ぬから、海を見れるのはこれが最後だ……」なんて言い出すものだから、断るわけにもいかず(笑)。写真で分かるように、2人席に3人が座る混み様です。


ちなみに前回の課外活動ピクニックは、自分たちの生まれ育つ県を知ろうという趣旨で、バンドルボン県の観光地巡りをしました。その日、村から初めて出た、山を下った、という子がほとんどで、そんな機会を子ども時代に作ることが私たちのミッションでもあるので、やりがいがありました。


その時は車に乗って丘陵を下ることさえほとんどの子どもたちにとって初体験で、乗り物酔いする子もいましたが、彼らは予想以上のたくましさで酔い覚ましに水を頭からかぶって気をとり直し、目新しい施設や食べ物を見てはしゃぎ遊びまわっていたのでした。


・ストーリーハイライト「Picnic2019Jun.」から動画を見られます
https://www.instagram.com/chotobela_works/


 


今回も若干の心配はありましたが、事故だけは起きないように運転手にゆっくり走るように伝え、子どもたちはバスで大合唱する余裕をもちながら、無事目的地へ到着しました。


 


 

2.おそろいのTシャツ

12月中旬は、バングラデシュの小学生たちにとって試験を終える時期です。


16日はバングラデシュの戦勝記念日。多くの学校でショヒッドミナル(記念碑)に花を添える行事があります。そして翌日から年度末休み(冬休み)を迎えます。5年生にとっては初等教育の卒業の時期でもあります。


キニティウの子どもたちが日々描く絵を時折ポストカード化したりしているのですが、今回はスタディツアーのおそろいTシャツのデザインに一枚の絵を選びました。写真中央のネコの絵です♡
家、村、花、果物を描いた絵は多いものの、子どもがネコを描くのは珍しかったので新鮮な一枚でした。彼らの住むロントン村ではネコをほとんど見かけないので……。


私たちは毎月10冊ほど、さまざまなジャンルの本をキニティウに寄贈しているのですが、その中にネコのお話があったかと尋ねると、どうやら以前子どもたちと私がビデオ電話した時に私が見せた飼い猫を描いてくれたのだそう。


ネコの左横にベンガル語で「アミ ビラル(私はネコ)」とあるのがカワイイですよね。このおそろいTシャツを着ていれば、とにかく人が多いコックスバザールのビーチでも迷子が出ないはずとの願いで作りました。


車通りが多く、しかも信号がない道路では子どもの集団を横断させるだけでもひと苦労。ChotoBelaボランティア(コックスバザールから参加)たちが盾になって子どもたちを渡らせました。


宿泊先では2~4人用の部屋に、5人ずつ振り分けました。「狭くてごめんね(資金の関係で)」と内心案じていたら、真っ白なシーツとふかふかなベッドにみんな横たわり、ある子に「ありがとう……心地いいよぅ」と言われた時には胸がジ~ンと熱くなりました。


 


 

3.たくさんの未知との遭遇

この課外活動で、子どもたちにとってなるべく多くの新しい経験をさせたいと狙っていました。実際、期待通り! ホテルの中だけでも、部屋の鍵を閉めること、洋式トイレの使い方、エレベーターの乗り方など、たくさんの「初めて」がありました。


特にエレベーターは、硬直する子、昇る瞬間「うわー」と喜びの雄叫びをあげる子もいて、以前、NPO「World Theater Project」(リンク)の活動でキニティウにて移動映画館を開いた時に観たアニメのワンシーンが思い出されて微笑ましかった!


一方で、下から8階まで階段を使った時には、さすが丘陵地帯の子どもたち! 平気な顔をして8階まで上がっていく様に、感心しました。


また、これは後で知ったのですが、レストランなどでテーブルについて食事をきちんと振る舞われることが、この国では敬意あるおもてなしと捉えられるのだとか。しっかりしたおもてなしを受ける経験を子どもたちにさせられたと、特に大人たちから喜びの声をいただきました。


 


 


 

4.人生初の海へ向かう

海はホテルから歩いて5分の距離。道中、下水からものすごい異臭が放たれ、ゴミも散乱していました。子どもたちは鼻をつまみ、足元に気を付けながら一列に並び、いざ念願の海へと向かいます。


子どもたちにとって初めて見る海。挑むように気合を入れました。早朝に村を出発し、夕方4時、ついにここまでやって来られました。


 


 


 

5.広い大きな海

ふだん、キニティウの子どもたちは、目的物に向かって、ガタボコの坂道だろうが何だろうが、猛スピードで(しかも裸足で)駆けだします。でも、そんな彼らが初めて目の当たりにした大きな海に対しては、なんだか急にシャイになったようにはにかんで、小さな波にもキャーと言ってなかなか近付かないところに、彼らの驚きを感じました。


平らな敷地がほとんどない学校前でふだん小狭くやっているフットボールも、この日は男の子たちがビーチで思いきりボールを蹴る姿も初めて見ました。凧揚げなどもして、夕日を見送り、暗くなるまで遊びました。


 


 

6.キニティウ=「日の出」と共に、海の清掃活動

翌朝も早起きして再び海へ。この日はビーチで清掃活動!


9月に世界中で行われた Climate Strike(気候変動ストライキ)を、キニティウの子どもたちも一緒にやりました。ストライキとして訴えるだけではなく、実際に自分たちも課外授業として行おうとしたのです。


バングラデシュも12月は肌寒いですが、みんなおそろいTシャツを着て円陣を組み、「ジェカネ シェカネ モイラ フィルベンナ!(道にゴミを捨てないで)」と声を上げてから始めました。


バングラデシュでは息を吸うのと同じように大人たちがふつうにポイ捨てをします。ChotoBela worksとしても環境問題にリーチすることはミッションのひとつなので、こういう活動を一緒にしてくれる子どもたちに感謝です。


 


 

7.ゴミ拾い競争

ゴミ拾いは6~7人ずつのチーム対抗。ゴミ拾い競争というかたちで、海に沿って1kmほど清掃活動しました。


ペットボトル、おかしの袋、チャイやお弁当の空容器など……あっという間にゴミ袋がいっぱいになり、持って前進するのに難儀するほどの重さになりました。


 


 

8.海で出会ったもの

キニティウの子どもたちに新しい経験を、と日々考えていますが、実はその裏には葛藤もあります。


少数民族の、丘陵地帯の子どもたちといると、その素朴さや個性をこのまま守りたいと思うことも常々。彼らはそのままで、私たちは何も与えないほうがいいのでは……という想いもゼロではありません。


でも、私は、子どもたちが多くを知った上で、自分たちのルーツに立ち戻れるようになってほしいという願いから、こうした活動を続けています。


ChotoBela works のミッションには「キニティウ、また、少数民族の子どもたちから、未来のバングラデシュを環境面で支えるリーダー/アンバサダーを育てる」というのがあります。クミ族・ムロ族は少数民族の中でも希少で、教育などあらゆる機会の乏しい辺境地に暮らしていますが、バングラデシュで誰よりも自然に近い生活をしています。


そんな彼らに、自国で暮らす困難さからミャンマーやインドへ移る難民になってほしくありませんし、一民族として暮らしながら誇りや権威をもち続けてほしい。また、多数派民族からも、無学者とか田舎者とレッテルを安易に貼られるのでなく、この国を形成する美しい存在として尊敬されてほしい。


残念なことに現在、少数民族の中でも数少ない高学歴者たちは、国に不満を抱いて海外に出て行きがちです。彼らからすれば国に期待できない気持ちもあるのでしょうが、少数民族はここで生きていくしかない人々がほとんどです。だから、バングラデシュで強く生きていく能力や自信が、この子たちには必要だと私は考えます。


 


実は私自身、青森にルーツがあることを心底誇れるようになったのは、バングラデシュに来るようになってから。海外に出て自分を認識してたくさんの経験をして、自分の誇れるものに気が付いた。だから、キニティウの子どもたちにもより多くの経験の機会を提供していくことで、いつか彼ら自身が少数民族であることを自らの使命として結びつけられるようになるのでは、と感じています。


 


この度、キニティウの卒業生が、卒業後もChotoBela worksと在学生を手伝うことで、高校卒業までの学費を部分的に支援する仕組みつくりができました。まだ時間はかかりますが、ここから、未来のバングラデシュの環境や少数民族の権威を守る存在を育てたいと本気で思っています!


最後の写真は、海がすっかり気に入った子どもたちの様子です。


 


 

経験した日: 2020年02月17日

Ambassadorのプロフィール


NatsumiA

1985年生まれ、青森県育ち。日本大学藝術学部映画学科在学時に、ドキュメンタリーの課題制作がきっかけでバングラデシュを訪れる。卒業後、映像制作会社の勤務を経て、2014年より単身でバングラデシュに暮らし始める。主な活動地は、チッタゴン丘陵地帯や国境沿いの地域で、少数民族と深く関わり、写真・映像制作を行っている(ドキュメンタリー作品『One Village Rangapani』【国際平和映像祭2015 地球の歩き方賞 および 青年海外協力隊50周年賞受賞】、写真集『A window of Jumma』【クラウドファンディング】など)。現在は、ロヒンギャ難民キャンプにも活動を広げ、ChotoBela works という現地団体を立ち上げ、バングラデシュの子どもたちの "子ども時代 / チョトベラ" を豊かに彩ることを目標に、移動映画館(World Theater Project バングラデシュ支部代表)、アートクラス、カメラ教室、スポーツデイなどを開く。また、バンドルボン県で、クミ族とムロ族の子どもたちが寄宿するキニティウという学校をサポートしている。

NatsumiAさんが書いたノート


バングラデシュ に関するノート