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【前編】私が30歳の時に、Appleの社内改革で取り組んだ3つのこと ~Brighture Inc. 代表取締役 松井博氏~

Posted on 2017年03月10日
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今や世界中にファンを持つ、Apple社。その米国本社でシニア・マネージャーを務められた、Brighture Inc.代表取締役の松井博氏。現在は語学学校激戦区のフィリピンで、ビジネスシーンで戦う多くの社会人を中心に実践的な英語を学ぶ環境を提供されています。しかし、「20代は自信を失いかけていた」そう。そんな松井氏がAppleで学ばれたこととは?

自信を失いかけた20代、「Apple」との出会い

-- 松井さんにとって20代はどんな時期でしたか?


松井:派遣社員としてAppleに入ったのが25歳で、当時は自分の進路に本当に迷っていましたね。アメリカの大学を出た後、日本の大手有名メーカーに新卒入社しましたが、アメリカ文化に慣れていた私は合わずに3年で退職しました。親の期待を裏切ることに随分悩みましたね。その後はアルバイトをしながら転職活動をしましたが、ちょうど就職氷河期に突入したこともあって上手くいかず……20社ほど落ちて、非常に自信を失いました。


 「自分に合う会社はないのかもしれない」と諦めかけていたその頃に偶然目にしたのが、英語とプログラミングができる人を求めるApple日本法人の派遣社員の募集案内だったのです。藁にもすがるような気持ちで応募しました。幸い採っていただけたのですが、とても働きやすくて。ようやく自分の居場所を見つけたような気がしましたね。


-- Appleのどんなところが良かったのでしょうか。 


松井:一人ひとりの責任範囲が大きかったことです。Appleの全製品を日本向けにローカライズするチームですら、担当者はたったの5人。他の部署も似たり寄ったりでした。朝から晩まで働きましたが、とにかく楽しかったですね。自分の持っている知識や経験を活かせて、「今までやってきたことは間違っていなかったんだ」と思えました。


当時、アメリカ本社からエンジニアとして来ないかというオファーを4回もらいましたが、タイミングが合わず行きませんでした。そして、転職を考え始めた頃に、スティーブ・ジョブズが戻ってきて組織改革が始まったのです。ちょうどその頃私は、日本法人のマネージャーに抜擢されたのですが、続けるかどうか非常に悩みました。でも、転職活動中をしてみたものの、結局Appleより面白い会社は見つからなかったので、残ることにしたんです。そして、社内の改革を押し進めることになりました。30歳になったばかりの頃です。


 

グローバル企業で若くして経験した「改革」

-- マネージャーとしての初仕事は何でしたか?


松井:突然、約60人が所属する部署を任されて立て直すことになりました。これといった経験があったわけではありませんでしたが、言葉通り「改革」を実施しました。できる人を引き抜いたり、システムを自動化したりと、やったことを挙げたらきりがありません。大きく分けて3つのポイントがあったと思います。


まず1つ目は「職場の整理整頓」。例えば、当時はオフィス内が散らかっていて、何がどこにあるかわからない状態でした。そこで試作品やテスト機材の貸し出しシステムを作り、管理できるようにするだけではなく、利用頻度のなども可視化して社内の仕組みを整えました。 


2つ目は「人員整理」。先ほどの物品管理と同様で、効果や成果と照らし合わせながらチーム内を整理していきました。嫌われ役になりたかったわけではありませんが、これをやらなければ会社が潰れるという危機感があり、私も必死でしたね。最終的に部署の人員は30人になり、当初のメンバーはほとんど残りませんでしたが、今までの3倍の成果をあげられるように。人材が多ければ良いわけではないこと、同時に、人材が組織の命であることを肌で感じた経験でした。


3つ目は「文書の英語化」。当時は日本語で書類を作ってから英語化していたのですが、それだと時間の無駄なので、初めから英語にしようと提案し、スタッフが書いた英語のレポートを私が赤字添削しました。社内でのTOEIC受験も推奨するようになり、みんなかなり上達していきましたね。


-- 現在の英語教育に通じる部分もあるのでしょうか?


松井:そうですね。英語を習得するには「覚える・浸る・使う」の3つしかありません。また、日本語に翻訳しながら使うのではなく、どっぷりと浸りきって英語は英語のまま覚えていく。日本語を介在させずに学ぶことが何よりポイントなんです。これは今でも大切にしている軸だと言えます。


【後編】「Brighture」を通じて世界で活躍する人材を輩出したい〜Brighture Inc. 代表取締役 松井博氏〜はこちら


【プロフィール】


松井 博 / Matsui Hiroshi


1966年生まれ。神奈川県出身。高校卒業後、渡米。オハイオ・ウェズリアン大学卒業。沖電気工業株式会社、アップルジャパン株式会社を経て、2002年に米国アップル本社の開発本部に移籍。iPodやマッキントッシュなどのハードウエア製品の品質保証部のシニアマネージャーとして勤務。2009年に同社退職。カリフォルニア州クパティーノ市内にて保育園「つくしデイケア」を開業。2015年フィリピンセブ島にて Brighture English Academy を創設。著書に『僕がアップルで学んだこと』『企業が「帝国化」するアップル、マクドナルド、エクソン~新しい統治者たちの素顔』などがある。大学や企業での講演も多数。 



 

経験した日: 2017年03月01日

Ambassadorのプロフィール


濱田真里

海外で働く日本人に特化した取材・インタビューサイトの運営を2011年から続けている。その経験から、もっと若い人たちに海外に興味を持って一歩を踏み出してもらうためには、現地のワクワクする情報が必要だ!と感じて『ABROADERS』を立ち上げる。好きな国はマレーシアとカンボジア。

濱田真里さんが書いたノート


フィリピン に関するノート