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バングラデシュの日本人校長が始めた、生徒のお母さんたちによるフェアトレード・プロジェクト【教えて!噂の彼氏の海外事情】

Posted on 2018年03月23日
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私たちの学校が地域の方々に広く認知されるようになってからは、保護者以外でも多くの地元の相談者が訪ねてきてくれます。今回は、その相談からスタートしたあるプロジェクトについて書いていきます。


 


 

学校が地域の相談所に

保守的なバングラデシュの方々にも、私たちの学校活動を少しずつ受け入れてもらえるようになってきた頃、多くの地元の方々が私たちに相談をもちかけて来るようになりました。


農業を仕事にしている方からは、「日本の農業の様子を教えてほしい。それを私たちも取り入れることで、もっと良いものを作りたい」とのご相談が。他にも「家に溜まっているゴミを処理したいのだが、役所の人が定期的に来ない。私たちが彼らに言っても何も動かないので、あなたから役所に言ってもらえないだろうか」など、気づいたら地域の相談所のような立場になっていました。


もちこまれた相談事に対して、私たちがいつもお手伝いできる範囲で彼らの問題解決をサポートしていたら、それが口コミで広がったのです。


 


相談の中には、今すぐにはどうすることもできないこともありました。特にお母さん方からの要望、例えば仕事や生活に関することです。「仕事をしたくても仕事がない」「何でもいいから仕事がほしい」「旦那が他界してしまった。これからどう生活していけばいいか分からない」など、私たちもなんとかしてあげたい気持ちはありますが、すぐには助けてあげられない要望も多くありました。


男性には日雇い労働などの体力仕事は多くありますが、女性には就ける仕事がある程度制限されてしまい、仕事をしたくてもできない方が多くいるのです。その為、まだ幼い子どもを学校でなく仕事に行かせる母親がいるのも事実です。


 


 

焼石に水…でもやれるだけやってみよう

お母さん方から仕事に関する相談が増えてきたことで、私の頭の中もどんどんそれらの相談事に占められていくようになり、彼女たちをサポートできる良いアイデアはないか、無意識に考えるようになっていました。


ちょうど友人がバングラデシュに遊びに来て、ある雑貨店に行った時のことです。バングラデシュには伝統手芸のノクシカタという刺繍製品があります。雑貨店では多くの外国人がノクシカタの商品を手に取って見ていました。友人もそのノクシカタをお土産として購入した時に、学校付近のお母さん方にもこの手芸を教えたらできるのではないかと、ふと思ったのです。


最初は安易な思いつきでしたが、さっそく翌日お母さんたちにノクシカタについて聞いてみると、「上手ではないがやったことがある」と言います。そこで私たちの学校の家庭科教師にも相談したところ話が進み、商品にするまでの指導を徹底的に行えば、フェアトレードとして売ることも可能ではないかと考えに至ったのです。


 


あくまで思いつきから始まったプロジェクトであり、いつまで継続可能かどうかは分かりません。ただ、お母さんたちに私の計画と考えを伝え、はじめは丁寧にサポートすることを約束しました。不安に思うお母さんもいたかとは思いますが、まずは5人のお母さんが手を挙げてスタートすることになったのです。


 


 

お母さんの努力の結晶

製品を作るために、私たちの学校の家庭科の先生に、布や糸の購入からノクシカタの指導、そして商品のデザインまで手伝ってもらいました。先生もはじめは興味本位が強かったかと思いますが、私が出る幕はなく、商品に関してはほとんど家庭科教師が主体でお母さん方に指導してくれました。


ノクシカタの指導は、放課後16時からの約1時間。あとは各自帰宅してから自主練習を2時間ほど。指導を始めて1ヶ月後にはお母さんたちの技術も向上し、商品製作にとりかかれるようになりました。


まずは家庭科の先生の指導のもと、販売先への営業時に必要なサンプル品をいくつか製作していきます。お母さん方が製作しているところを見させてもらいましたが、始めた頃の1ヶ月前とは手つきが全然違っていて、驚きました! 相当、家で練習を積んできたのだろうと、彼女たちの努力を垣間見ることができて感動しながら見ていた数時間後には、最初の作品・小さなポーチ(サンプル品)ができました。


これが売れれば、少しだけれどもお母さんたちが収入を得ることができるということで、私も販売先の確保のために動きだしました。どこにどのようにして販売するか迷っておりましたが、様々な方へ声掛けし、運よく日本のある学校の文化祭で一時的に販売許可をとりつけることができました。まずはトライアルということで、リスクを抑えた販売場所が確保できたので、あとはお母さん方に商品製作に集中してもらい、ある程度の個数ができるのを待ちました。


 


 

遂に!フェアトレード・プロジェクト実施

お母さん方の頑張りもあって、目標数の商品が無事完成しました。初年度ということもあり、商品数は多くはありませんが、それでも2日間の文化祭で全て売れるかどうか当日まで心配でした。


しかし結果は思っていた以上に好評で、文化祭初日で完売してしまったのです!


 


多くの方々が興味をもってくださり、感謝の気持ちでいっぱいでしたが、それ以上にお母さん方の頑張りがこういった良い結果に結びついたことがとても嬉しくて、終わってすぐに連絡したのを覚えています。


その後、お母さん方には報告とともに商品の対価を渡しましたが、彼女たちの今までの頑張りが形として現れたことに、お母さん方全員が感極まっていました。


 


今でも継続して文化祭での販売は行っておりますが、その他にもある美術館の方からグッズ製作の依頼をいただいたり、似顔絵刺繍などの個人依頼がある時に製作しています。


一時は、一気に販路を大きくしようと試みましたが、一定期間での製作になると数量が多くなるとともに商品の質も悪化してしまうため、現在は急がず できる範囲で進めています。今は販路を少しずつ拡大するため、新たに参加希望してくれたお母さん方を指導しているところです。


私たちはあくまでもサポート役ということで、製品のチェックと販路の確保のみ行っており、製作数はお母さん方一人ひとりに決めてもらって全体を調整しています。


 


お母さん方の相談から思いつきで始めたプロジェクトでしたが、今では毎年お母さんたちの大きな収入に繋がっています。


また、これをきっかけにいくつかの取り組みを地域の方々とともに進めていくことになりました。それについてはまた次回。


 

経験した日: 2018年03月23日

Ambassadorのプロフィール


Katsu

宮城県仙台市出身。大学在学中はプロキックボクサーとして活躍。卒業後は日本の私学教員をやりながらタイ、カンボジア、ネパール、ミャンマーなどアジアの教育支援に携わる。その後、とある公益財団法人の仕事としてバングラデシュでモデル校となる学校建設・運営を任され、生徒数約1000名の学校をバングラデシュで立ち上げる。

Katsuさんが書いたノート


バングラデシュ に関するノート