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バングラデシュで日本式体育祭を。個人競技だけでなくチームワークを教育に取り入れる【教えて!噂の彼氏の海外事情】
2013年の開校以来、私たちの学校では多くのイベント(学校行事)を行ってきました。これから何回かに渡って学校行事についてご紹介します。
今回は、バングラデシュの一般的な体育祭と、それを踏まえた本校での取り組みについてです。
バングラデシュの体育祭は個人戦のみ
バングラデシュでも体育祭は学校における大きなイベントのひとつです。1~3月の涼しい時期が体育祭シーズンです。
ただ、バングラデシュでは学校の大きなイベントは政治利用されることがあり、地域の偉い方や他校との繋がりから近隣の学校長をイベントごとに招待する慣習があります。私にも毎年30通ほどの招待状が他校から送られてきますが、行くのはふだんから交流のある学校だけにしています。
バングラデシュの一般的な学校の体育祭は、この数年間いろいろ見てきました。
日本と大きく違うのは、バングラデシュの体育祭は「個人戦・個人競技が主」であるところです。
100m走や幅跳び、それにバングラデシュならではの競技もあるのですが、全て個人対個人の競技なのです。従って、どこの学校でも、自分が競技に出ない時には友達と遊んでいたり、親と話をしていたりと、他者を応援する人はさほどいません。
私は、運営・管理方法次第では子どもたちが体育祭で多くのことを学べると思っています。それに全校生徒一丸となって作る体育祭という理想像があるため、バングラデシュで多くの学校の体育祭を見るたび驚きました。
私たちの学校は同じようにはせず、体育祭=個人戦・個人競技という意識を変え、生徒にとってより良いイベントにしたい。多くの学校の体育祭を見たことは、そう考える良いきっかけとなりました。
イベント運営が現地教職員の成長に
そこで2013年1月開校してすぐ、3月に体育祭を実施する予定を立てました。開校からわずか2ヶ月での体育祭です。
新しい体育祭を作るにあたっての土台はほとんどありません。それこそ競技の選定から始める必要がありましたし、現地教職員たちも個人競技ばかりの体育祭しか経験したことがないので、私たち日本人スタッフが主導して進めていかなければなりませんでした。
以前、開校前の土地問題から初年度は仮校舎からスタートすることになったことを書きました(土地問題に関する過去記事リンク)。その仮校舎には前に小さなスペースがあるのみで、大きなグラウンドはありません。まずは体育祭ができるグラウンド探しから始まりました。
いろいろ探した結果、最終的に決まったのは学校から車で20分程の場所でした。遠いのが難点ですが、場所が決まらなければ具体的な話も進まないので、初年度は生徒と保護者をバスで送迎する方法で決めました。
ゼロからの体育祭は準備もタイヘン!
その後は競技種目を決めて練習、そして体育祭の運営方法の確定に急ぎました。
しかし競技種目がすぐには決まりません。というのも最初、教職員の育成を兼ねて現地教職員たち自ら企画してもらいたかったので、彼らにディスカッションをする時間を設けたからです。
話し合いでは、やはり個人競技種目ばかり案が出てきたので、都度 私が考える体育祭像の話をしました。「子どもたちが自分のことだけでなく、仲間たちを自分ごとのように応援する体育祭。そして競技においてはみんなで協力しなければ良い結果が出ない種目も入れたい」と。
最終的には現地教職員たちが自らいろいろ調べ、話し合いの中から決めていきました。
バングラデシュ国旗からとって緑と赤の2チームに分けて、チーム対抗戦を実施することに決定。競技種目は100m走や障害物競争など個人競技の他にも、日本の体育祭を参考にして騎馬戦や大玉転がし、綱引きなど団体競技も実施することにしました。
当日の運営準備についても同様に進めていきました。
現地教職員や生徒たちからすれば、初めて行うチーム対抗戦、そして初めての競技種目ばかりなので、運営方法などがまったく分からないところからのスタートでした。それでも、教職員たちが主体的に考え、動きながら準備を進めていってくれたおかげで、なんとか開催までこぎつけることができました。
もちろん準備途中、問題はいろいろと出てきます。綱引き用の大繩や大玉が手に入れられずに困った時でも、彼らが自ら解決策を見つけ出し、行動に移すことができるようになっていきました。彼らを見ていると日に日に成長しているのがよく分かりました。この時の彼らの経験が、今の学校の「主体的に学校運営に関わる」良い雰囲気に繋がっていると思います。
生徒以上に、先生たちが大コーフン!?
本校初めての体育祭、そしてチーム対抗戦・団体競技を行ってみた結果はというと……私が思っていた以上にその会場にいた全員が盛り上がりました! 終始 生徒たちが応援する声がやまず、保護者の方々も大きな声援を送ってくれました。
更に私にとって意外だったのは、生徒以上に現地教職員たちがエキサイトしていたことです。彼らも各チームに振り分けていたのですが、チームが勝った時には生徒以上に喜び生徒と抱き合ったり、微妙な判定の時は我を忘れて判定に抗議をしたり、時には教員同士で言い争う面もあり……、私たちが割って入ることもあるほどです(笑)。
実は、現地教員同士がきわどい判定で言い争うことは毎年起こっています。ベンガル人の文化的背景からなのか、今まで団体戦で競技したことがなくてゲームにのめり込んでしまうからなのか、どうかは分かりませんが、ひとつ言えるのは、この国の人たちはチームとしてひとつになった時とても帰属意識が強く、一致団結した時のエネルギーはとてつもなく大きいということです。そのため毎年、同様の場面が起きるたび手に汗握る心持ちになります。
初年度の体育祭はうれし涙あり、悔し涙ありの、生徒にとってもこの学校にとっても素晴らしいものとなりました。
こうして開校時からチーム対抗戦、団体競技を取り入れ体育祭を実施しましたが、それも毎年進化していて、今では生徒たちが体育祭全てを運営できるところまで来ることができました。
次回は現在の体育祭になるまでの過程について書いていきます。
経験した日: 2018年04月20日
by Nnn